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2005年6月 5日 (日)

拉致被害者救出のために制裁発動がどうしても必要な理由

■拉致被害者救出のために制裁発動がどうしても必要な理由
  西岡力(救う会常任副会長)
 
 拉致問題を理由にした対北朝鮮制裁は効果がある。むしろ、今発動しないと拉致解決に重大な障害が生まれ、逆効果が出る。

 単独制裁発動は、日本国が国家として拉致被害者全員を取り戻すという強い決意を内外に示すことだ。金正日政権の偽遺骨提供という犯罪的行為が明らかになった以上、「このような悪事は絶対に許さない」という日本の意思を示すためには制裁発動しかない。それを躊躇していると、拉致問題を重視していないという間違ったメッセージが発せられてしまう。単独制裁では中国、韓国がその穴埋めをするから効果がないという論があるが、国家意思の発信という観点を考えない、短見に過ぎない。

 断固たる制裁こそが、北朝鮮の対日政策を変えるのだ。

1.金正日に日本の決意を伝え、対日政策を変えさせる

 制裁は、金正日に向けたメッセージである。昨年12月、「横田めぐみさんの遺骨」が偽物であることがわかった。北朝鮮の担当者は、2年かけて日本の鑑定能力を調べ、鑑定不能となると判断し偽物の遺骨を出してきた。そのさい、「これで拉致問題は終結します」と金正日の決済を取っていることは間違いない。と
ころが、問題終結どころか日本は怒りで沸騰している。担当者は今必死で金正日に、「帝京大学の鑑定が捏造である、その証拠は小泉首相が怒りを表に出さず話し合いの継続を強調している」などと、弁解している。

 日本が拉致を理由に単独制裁を発動すれば、金正日に日本の不退転の決意が明確に伝わり、担当者は間違いなく替えられる。これこそがチャンスで、ここで初めて「8人死亡、2人未入境」というシナリオを書いた人間とは別人物が担当者になる。

 「新たな担当者は「どうすれば経済制裁を解除し、日本からお金をとってこれるか」を考えることになる。このとき、前任者のシナリオを否定し、新たな情報を出してくる可能性が高い。それをてこに、全員を取り戻すまで闘いつづければよい。」


それには「現在の北朝鮮の担当者は失敗した」「日本はこの鑑定結果にまったく納得していない」ということを、まず金正日に教えなければならない。そのための経済制裁だ。


2.ポスト金正日候補に拉致被害者帰国なければ経済協力ないことを伝える

 制裁はポスト金正日候補へのメッセージでもある。北朝鮮内部は、いつ何が起こるかわからない状態で、金正日に対する国民の支持は地に落ちている。仲間内だけの席では金正日のことを「あのやろう」と呼んでいるときく。政変が起きるとすれば、軍隊か政治警察などの武力をもっている部署が、金正日を暗殺したり
逮捕するというかたちになる可能性が大きい。一時的に治安が乱れ内戦状態になるかもしれない。そうなった場合、どのようにして拉致被害者を救出するかを考えておかなければならない。ここで重要なのが、ポスト金正日を狙う人々に、日本がどれくらい拉致問題に本気なのかを教えておくことなのだ。

 すでに工作機関である「三号庁舎」の担当者は、日本が拉致問題で怒っていることに気づきはじめている。外交官もわかってきた。しかし軍の幹部や、国内の取締りをやっている政治警察の幹部はまだ知らないと思われる。過去に日本は、拉致被害者がいるのにコメを送ってきた。だから日本がそれほど怒っているとは思っていないのではないか。日本から食糧支援や経済支援を受けるには、拉致被害者全員を帰さなければならないのだと広く知らせる必要がある。そうなればいざ事が起こったとき、金正日政権を倒したグループは工作機関に命じて被害者を全員確保し、流れ弾などに当たって死なれたりしないようにする。「彼らを確保していたら多額の経済支援につながるかもしれない。しかし死なせたら日本からお金が来ないどころか、自衛隊や米軍が救出に乗り出してくる」。そう思わせることができれば、拉致被害者の安全は保障される。そのためにも単独制裁により日本が本気で怒っていることを伝えることがもっとも重要となる。

3.韓中の拉致解決協力を引き出せる

 制裁は韓国・中国へメッセージにもなる。韓国・中国は米国主導で対北朝鮮経済封鎖などが実施されることを避けたいので、金正日政権に対して核問題での譲歩を迫るべく様々な説得を行っているが、その際、多額の経済協力実施を材料としている。しかし、韓国・中国は自国が経済的に負担する用意はなく、日朝国交
回復に伴う日本からの政府開発資金をあてにしている。日本が拉致を理由に単独制裁をかけるならば、韓国・中国は拉致問題が完全に解決しない限り資金を提供しないという日本の断固たる姿勢を理解し、核問題を巡る金正日に対する説得のなかに、拉致問題で日本を納得させうる対応をするようにという注文も追加でつけるようになる。いくら核問題で金正日が大きく譲歩しても、それだけでは日本は拉致を理由にした制裁を解除せず、資金を出さないから、結局、妥協は成立しないからだ。逆にいえば、そのような判断を韓国・中国政府にさせるためには、いま日本が拉致だけを理由にして制裁発動すること以上に、よい策はない。

4.国連安保理決議に拉致を取り上げさせるステップになる

 さらに日本単独制裁は、国連安保理事会による国際制裁への重要なステップになる。アメリカはリビアによる旅客機爆破テロに対してまず自国で制裁をかけ、その上で国連の安保理に持ち込み国際的な制裁をかけた。日本もまず一国で制裁をかけることだ。自国でかけていなかったら、他国の協力は得られない。

 日本がすべきことがある。近い将来、国連の安保理事会で北朝鮮の核問題が議論されることは間違いない。日本は外交力を駆使し、その決議のなかに「日本人、韓国人拉致被害者を全員帰さない限り経済制裁をつづける」という文言を入れる必要がある。そこには当然「北朝鮮が核開発をやめない限り経済制裁をつづける」と書かれるだろうが、拉致問題を併記させることが重要だ。

 イラク戦争に関してアメリカの攻撃の根拠になった国連安保理決議1441号(2002年11月8日、中国ロシアも含む全会一致で成立)には「拉致」が入っている。「安保理はイラク政府がイラクによって不当に拘禁されたクウェート人や第三国国民を、送還あるいは消息確定に向け協力すべきとした(累次の)国連決議をないがしろにしてきたことを遺憾とする」と明確に書いてある。クウェートができたことを日本ができるか。国家としての日本の姿勢が問われる。そのためにはまず日本が単独で制裁をかけておくことが絶対不可欠だ。

5.日米同盟の維持強化にも効果がある

 日本人を多数拉致していまだに全員を返さず全貌も明らかにしようとしない金正日政権が核ミサイルを持とうとしている。韓国では親北派が勢力を伸ばし、中国が半島の南北への影響力を増大させつつある。いま日本は、白村江の戦いの後か、日露戦争の直前かという国難に直面している。ただ、アメリカのブッシュ政
権が金正日政権を「悪」と位置づけ対決している点は有利な状況だ。

 制裁は効果がないなどという人達は、その全体状況を見ていない。対話により妥協が可能との虚構にしがみついている。テロ国家をどう無力化するのか、独裁国家をいかに民主化し人権抑圧をやめさせるのか、朝鮮半島の安全保障をどう考えるのかはまったくアメリカ任せで他人事になっている。

 日本がいま拉致を理由に対北朝鮮制裁に踏み込むことは、ブッシュ政権と協力して金正日政権を処分する事業に積極的に参与する第1歩につながる。それなしには、日米同盟の維持強化も、日本の安全繁栄も危うくなる危機が目の前にある。
(★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2005.06.05)より 訂正済み
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