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2005年6月20日 (月)

北朝鮮の核問題~伊豆見 元 教授~

◆参議院拉致問題特別委員会における 静岡県立大学 国際関係学部教授 伊豆見 元さんの発言を、テキストにしました。拉致問題に直接影響のある、六カ国協議、核問題についての見通しをお話しになっています。参考に。

~~2005年6月10日 参議院拉致問題特別委員会にて~~

ありがとうございます。本日は当委員会にお招きいただきまして大変光栄に存じております。15分程度ということでお時間を頂戴しておりますが、私は昨今の六カ国協議を巡る動きを中心にして、北朝鮮の核問題について私が考えておりますことの一端をここで述べさせていただきたいと思います。

ご案内のように、六カ国協議=六者協議が再開するのではないかという期待が出ております。6月6日にいわゆるニューヨークチャンネルと呼ばれておりいます-アメリカと北朝鮮との間のいわば外交接触の場で北朝鮮側が六カ国協議へのコミットメントを表明した。しかし何時六カ国協議の場に戻るかは特に示唆するところは無かった。というのがアメリカ側の紹介でありますが。

少なくとも北朝鮮が六カ国協議へのプロセスについてのコミットメントを確認をいたしましたので、まぁ、再開も可能であるとの見通しもたくさん出てきているところだと思います。

しかし、私はこれを=北朝鮮の観点にたって考えるならば=という条件をつけてみますと、「やはり難しいだろう」と。「北朝鮮が六カ国協議の場に戻って来る事はきわめて、難しい」と思っております。

大きな理由として2つご指摘できると思います。
ご案内のように現在は関係各国、全てが、六カ国協議を通じて外向的に、平和的にこの北朝鮮の核問題を解決しようと。まぁ、アメリカブッシュ政権もそういう立場でありますし、したがって、簡単には今、六カ国協議の枠組みというのは崩れないような状況になっています。

そう言う中で(六カ国協議が)なかなか開けないままで、1年が過ぎようとしているわけではありますが、しかし開催できないと言うのは六カ国協議が崩壊するという話ではわけではない。

むしろ、六カ国協議が再開しないほうが、(しない方がというのは言い過ぎかもしれませんが)六カ国協議が再開されなくても、少なくとも当分の間-これが数ヶ月か、半年か、あるいは一年近くになるか、よくわかりませんが-当分の間は、六カ国協議枠組みは残ることになる。

これは私は、おそらく確実であろうと思いますし、北朝鮮の目から見ましても、六者に出て行かないほうが、実は、六者の枠組みは残るんだという考え方は非常に強くあるであろうと思います。

何故、六カ国協議が開かれなくてもその枠組みが残る、あるいは六カ国協議が完全に終わりにならないのかと言えばですね、まだまだ関係各国は、北朝鮮を六カ国協議の場に戻す、あるいは六カ国協議の場で外向的解決を図るための努力を尽くしていないと、まだまだやれることはあると、やるべきこともあるという立場にあるからだというふうに思っております。

従ってブッシュ政権も、仮に今回、北朝鮮がすぐ六カ国協議、第四ラウンド、第四回会合に出てこないと言うことがあっても、すぐさま国連の安全保障理事会にこの問題を付託することは私はないと思っております。

国連安全保障理事会に持って行く前に、中国にもっと役割を果たしてもらう。端的に言うならば、中国に影響力を行使せいと。圧力をかけよと。そう言う努力をアメリカは最優先させると思います。ま、最近では南北間の政府間の対話、協議というのも又、再開されましたので、中国に加えて韓国にもそういう努力、北朝鮮に圧力をかけ、北朝鮮の態度を変えさせるという、そう言う努力をしばらくしていくであろうと思います。

そういう努力が全て功を奏さなかった、万策尽きたという形になれば、そこで初めて国連の安全保障理事会に持っていくという話になるんであろうと。ま、これは今の段階で国連の安全保障理事会に持っていきましても、ただ話し合いが続くと言うことしか想定できない。国連の場で圧力を北朝鮮にかけていくような方向に持っていく、あるいは、最終的な経済制裁と言うような形に持っていくと言うことも、現時点では可能性はほとんど無いと断定できると思います。

ま、ともかく中国、韓国はそう言う方向にいくことに反対しておりますし、中国が反対している限り、国連の安全保障理事会でそのような話が進む事も考えられないということになります。

したがって北朝鮮の観点をもう一度申し上げますが、六者会談、六カ国協議というのは、今回出ないほうが逆にその枠組みはしばらく残るんだと言うことがあります。

一方、六カ国協議に参席した場合どうなるかと言うことでありますが、むしろ参席しますと、こんどは協議が完全に決裂して六カ国協議そのものに、終止符が打たれると言う可能性が相当程度あります。あるいはそのリスクがきわめて高いというふうに言えるであろうと思います。

これはもはや、「六カ国協議で結果を出す」ということについての、どうやって結果を出していくかという方法、あるいは課題等について、もうアメリカの考えている事と北朝鮮が考えている事に、もはや天と地の差があるほどの開きが出てきたということであります。

ご案内のように、アメリカはもちろん北朝鮮の核を完璧に、二度と後戻りしないように、しかも検証可能な形で廃絶する、廃棄、解体させると言うことに相当な重点を置いております。

そしてその為に、昨年、第3回目の会合、6月の第三ラウンドの六カ国協議の場で、アメリカは相当細かい、且つ具体的な、解体のための提案をだしました。これは本当にそれどおりに実行するんであれば、まず確実に北朝鮮の核プログラムというものは、廃棄・解体に持ち込めるだろうと思われる程度の、詳細且つ具体的なものであったようであります。と言いますのは、もちろん全文は公開されているわけではありませんので、我々はそれを手に取ってみるわけにはいきませんが、しかし相当、具体的で詳細なものであることは間違いないと。

ところが、それではもちろん北朝鮮はもちろん応じるわけがありませんので、いわゆる見返りの対応処置というこちら側もとっていくと。もそれに見合う対応処置-コレスポンデスメジャーズと我々呼んでおりますが-対応処置をとっていくことになります。見返りのレベルが北朝鮮にはどうしても納得がいかない。

アメリカの提案によりますと、一番最初の初期段階におきまして、北朝鮮が明確な核の廃絶ということにコミットメントをするその段階で、六カ国協議の他のメンバーは北朝鮮にある種のエネルギー支援(ま、重油支援になると思いますが)それを行うこということになりましたが、この時点では、アメリカはそこに参加しないということになっています。ですから、最初に北朝鮮が動き出す時にアメリカは一切参加しないという形になっている。

そして第二段階以降、実際の実行段階でありますが、(実行段階というのは、核の解体が進んでいく段階に入りますと)アメリカはそれに応じてある程度見返りに参加して、出していくということになりますが。これが非常にまだ茫漠としたものであるという事が一つ。二つ目にロードマップの形をとっておりません。すなわち北朝鮮が何かある行為に出る、すなわち核の解体のある具体的なステップを踏んだときに、アメリカから一体どんな見返りがあるのかというのは、組み合わせにはなっていないわけです。

ですからこういうのは、北朝鮮の目から見れば、一方的に自分たちの核解体が進んで、アメリカから何の見返りも得られないかもしれない。ヘタをすると、一方的に武装解除を迫られ、あっと気付いたときには、自分は丸裸になっているが、とても自分の安全も確保できなければ物も得られないという、そちらの方向に行く可能性があると言うことであります。

実は、過去一年北朝鮮はそれをいろんな形でアメリカに修正して欲しいと、すなわち第一段階で少しでもコミットして欲しい、あるいは第二段階で実行の課程=履行の過程になってきた場合には、そこに「ロードマップ」のような、かちっとした道筋を付けて欲しいという事をいろんな形で要求してきましたが、ず~っとはねのけられて参りました。

今のブッシュ政権、第一期目もそうでありますが第二期目も、もとよりそう言うものを聞き入れると言う形にはなっておりません。ですから、そういうのがアメリカの立場。北朝鮮の要求は全然聞いてもらえない。

一方北朝鮮はこの一年間もちろん核開発を継続して進めて参りましたし、尚かつ今後これを進めていく、拡大していこうと彼らはしております。

ご案内のように、2月10日に外務省声明がでました。これを一般によく「核保有宣言」という言い方をすることがありますが、私はこれはきわめて不適当な表現であると。保有ではなくて、核を継続して拡充していこうと、「核兵器を継続して拡充していきたいという宣言」を彼らは行ったわけでありますし、実際それに乗っ取った方向に今、動いております。


そうしますと、北朝鮮にしますと売値が高くなったと言うことであります。

昨年の6月と、一年たった現在の6月では全く状況が異なる。昨年、北朝鮮が解体・廃棄しなければならなかった核プログラムと、現在北朝鮮が、あるいは将来北朝鮮が、廃棄・解体しなければいけない核プログラムの中身は、全く違うものになりつつある。要するに、たくさん彼らは譲らなければいけないという話になります。要するに核開発どんどん進めたということはそう言うことであります。

そうしますと譲らなければいけないものが増えたわけです。(増えたというか自分で増やしたんですが)増やしたわけですから、見返りも当然それに見合うだけ、多くなければならないと言うことでございます。

昨年6月の段階でアメリカが、あるいは我々国際社会が対応処置として考えている見返りでは不足なわけでありますんで、すなわち北朝鮮は要求をつり上げたわけであります。

それがいわゆるいろいろ言われております、「軍縮会談にしたい」、「我々も核保有国だからそうやって認めてそれなりの扱いをせよ」、あるいは「対等の立場で交渉をせよ」とか言っているのは、すなわち自分たちの売値を上げたと、つり上げたと言う話でありますから、そうしますと、この二つがぶつかってもうまく行くであろうという見通しは、まずないわけであります。

従って、六者協議が再開される、これがぶつかる、「どうしようもないな」と、「六カ国協議と言う場ではとても北朝鮮の核開発を止められるかどうか解らないな」と言う雰囲気になる可能性が相当程度りますので、したがって六カ国協議はむしろここで、終止符が打たれる可能性がある。

しかし、真に皮肉な話でありますが、六カ国協議に北朝鮮が出てこないほうが六カ国協議は残るけれども、出てきたら最後は終わりになるかもしらんと言う話ですし、終わると、当然のことながら、国連安全保障理事会に行くかもしれないと言うことですから、北朝鮮はおそらくこの辺を計算しますと、私は今回(北朝鮮が)六カ国協議に応じてくる可能性は少ないと、ほとんどない。まずないというふうに思っております。

そうしますと結局は当面しばらくの間、ぐずぐずとした状況がおそらく続くのであろうと。六カ国協議が開かれないけども、国連の安保理に行くわけでもないという。ま、周辺で中国も韓国も一所懸命外交努力をしていると言う状況。一種の現状維持、ステータスフォーであります。現状維持がそのまま続くという、その公算は、少なくとも半年程度は一番それがあり得る。来年になるまでは、そう言う風になると思いますが。

その間も問題はご案内のように、北朝鮮の核開発は、粛々と続いていく。彼らの売値は更に更にに高くなっていく。すでに北朝鮮はこの2年間稼働してきました5メガワットの固形型の原子炉(実験炉の小さい物ではありますけれど)のこれの稼動をとめました。そこから使用済み燃料棒8000本以上引っこ抜いたということもはっきりさせました。それで、これを再処理にかけますと、更に、(さてどのくらい出来るかでありますが)最低2~3発分、15~6キロ、多ければ3~40キロぐらいの兵器級のプルトニウムを彼らは更に抽出できるという状況になっている。

その5メガワット関連については、そういう再処理もありますし、更に、これはもう相当近く直近にそうなると思いますが、彼らが更に新しい燃料棒を再装填しまして、また5メガワットを稼働させるということになります。2年ぐらい稼働させて、燃焼させると、又2年後に、全部8000本引っこ抜いてかなりの程度の兵器級プルトニウムが手に入る段階に進められるということになる。

ですから、5メガワットで進めている核開発がありますし、二つ目には建設途中で工期を中断しておりました50メガワット、更に200メガワットという、(電力の規模でいえばそれだけになりますが。プルトニウムをもしそこから抽出するのであれば、また量が飛躍する、拡大するという物)の建設も始めると、再開すると言うことを、今、非常に強く示唆しておりますが、おそらくこれは、現実のものになるであろうと思います。

ただ、50メガワットであっても最短で2年ぐらいかと。-北朝鮮、2年以内ぐらいに何とかしたいと言っているようでありますが-まぁ2年として、2年でできて、そこから原子炉を動かすと、更に2年ぐらいかけないと燃料棒を燃焼させられない。それからそれを引っこ抜いて、引き出してきて、再処理にかけて、プルトニウムを作る、また一年と言う話ですから、最短で5年ぐらいかかります。

5年かかるということは、すなわちブッシュ政権の間には、実は北朝鮮の核は増えないということですが、しかし、核の開発はどんどん進む。

さらにもう一つ3番目には秘密裡に彼らが進めております、ウラニウムのほうであります。ウランの濃縮プログラムによる核開発というものも、当然これも進んでいると考えるべきであろうということであります。

そうしますと、継続して現状維持を続けると言う意味では、まぁ、当面はこれで良いわけでありますが、少し先を見ますと、問題はより困難になりますし、危険度は更に増すということになります。

たとえば半年、あるいは一年、数年たってこの問題を外向的に解決しようと~そのチャンスがその時まで残っているかどうかわかりませんが~そうだとしますと、少なくとも、売値はものすごく高くなりますから、それを北朝鮮に放棄させる為のコストはものすごく高くなる。後になればなるほど、我々が支払わなければならない見返り=コストというものは相当高くなる。これは明らかでありますし、そのコストをうまくみんなで分担して調整できるかどうかも、余りよく解らないような話になります。

あるいは、交渉の取引が不備に終わる、外向的にうまく解決できなかった場合には、北朝鮮の核開発はどんどん進んで、最後は核ミサイルというものを手にした北朝鮮と、我々はどう共生するのかと。どう一緒に生きていくかという問題にどうしても、直面する。

その際どのように対応するのか。日本も核武装を行うべきなのか。あるいは、アメリカのエクステンデドリターランス=核の傘、あるいは拡大抑止というものでアメリカに守ってもらうのか?

そのアメリカの核の傘の有効性みたいな問題もさらに考えなくていけないとと思いますし、その際たとえば、『非核三原則というのでよろしいのか』と。持ち込ませないという三番目の原則をそのまま維持するのが、意味があるのかどうかというそういう問題にも我々は直面することになります。

あるいは北朝鮮の核開発がうんと進んだ段階で北朝鮮が不安定、混乱の状況に追い込まれた場合どうするのか?

こんどは、たくさん持っている北朝鮮の核が流出するかもしれません。拡散する。~拡散というのはもちろん、北朝鮮の核に対応するために別の国が核兵器開発に走るというのも拡散ですが~北朝鮮の大量の核兵器が外に流出していくというのもあります。

とりわけその心配は量が少なければその心配は相対的に小さいわけでありますが、量が多くなれば、流出というのは、北朝鮮が売り払うということも我々当然考えなくてはなりませんですし、それがアメリカの一番の懸念であることはご案内の通りでありますが、アルカイダのような国際的なテロ組織の手に渡った場合どうなるのかということも我々は考えなけれいけないと言うことであります。

したがって今、北朝鮮の核問題は、私は当面みんなで先送りをしようとしている状況にあると思いますし、実際先送りをするのだと私は予測しておりますが、果たしてそうゆう状況でいいのかと、大変強い疑問を持っております。

現在我々には危機感は明らかにあるでしょう。切迫感は全くないというふうに私は思っております。危機感に加えて切迫感を持ち、今すぐ、直ちに、この問題をできるだけ早く解決する為の対応を考える時期に来ているというふうに思っています。

時間を若干超過しましたけれど、ありがとうございました。

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