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2005年7月28日 (木)

西岡力氏国会意見陳述要旨

西岡力(救う会常任副会長)
衆議院拉致特別委員会意見陳述要旨
 
           2005年7月28日

 いまこの瞬間も多くの拉致被害者たちが北朝鮮で「いつ帰れるだろうか」と指折り数えて待っています。

1 金正日の二つのうそとの戦い

 私たちは「めぐみさんたち死亡とされた8人は生きている」「金正日が認めた13人以外にも多くの拉致被害者がいる」というキャンペーンを行い、北朝鮮の説明の矛盾を指摘してきました。そのことは、本日の安明進証言でも明らかにされるものです。
 日本政府は昨年12月24日、北朝鮮から提供された遺骨、死亡診断書、交通事故報告書等すべての「物証」が捏造と判明したことを受け、「北朝鮮側説明を裏付けるものは皆無である」「生存者は直ちに帰国させることが基本」という立場を明確にしました。

2 日本政府の制裁予告と、発動されない制裁

 同じく政府は昨年12月24日「北朝鮮側の迅速かつ誠意ある対応をしない場合、日本政府として、厳しい対応をとらざるを得ない」(細田官房長官)と制裁を予告しました。
 ところが北朝鮮は日本側が遺骨鑑定を捏造しているなどという言語道断の開き直りをつづけて日本との対話を拒絶し、核武装を公言し核実験の準備さえしています。誰が見ても「迅速かつ誠意ある対応」はなされていません。それなのに、小泉首相は制裁発動を決断していません。

3 制裁発動の意味

 制裁発動は、拉致被害者全員を取り戻すという国家意思を示すことです。それを躊躇していると、拉致問題を重視していないという大変危険なメッセージが発せられてしまいます。
 日本が拉致を理由に単独制裁を発動すれば、金正日に日本の不退転の決意が明確に伝わり、担当者は間違いなく替えられます。これこそがチャンスで、ここで初めて「8人死亡、2人未入境」というシナリオを書いた人間とは別人物が担当者になり、被害者を帰すことを考える可能性が生まれます。
 制裁は韓国・中国へメッセージにもなります。日本が拉致を理由に単独制裁をかけるならば、韓国・中国は拉致問題が完全に解決しない限り資金を提供しないという日本の断固たる姿勢を理解し、金正日に対する説得のなかに、拉致問題で日本を納得させうる対応をするようにという注文もつけるようになるのです。

4 6者協議で拉致問題が進展しない理由

 拉致問題は今まさに正念場を迎えています。中国、韓国、ロシアそしてアメリカまでが6者協議開催前の日本の単独制裁発動に反対しました。ということは、今開催中の6者協議で北朝鮮が核解決に肯定的態度をとれば、4カ国は北朝鮮に圧力をかけることに反対し続け、それに日本政府が引きずられいつまでも制裁発動はなされず拉致は事実上棚上げにされる、具体的には、核問題解決のために拉致問題が一切進展しないまま日本が経済的負担を求められるという最悪の構図さえありえます。
 やはり天は自らを助けるものを助く、であります。6者協議で北朝鮮代表に、生存者帰国と辛光洙ら拉致実行犯引き渡しを強く迫り、それをしない場合には単独制裁を発動し、国連安保理事会などを通じた国際制裁も求めていく、という断固たる姿勢を示すしかないのです。また、普遍的人権という観点から、明確に韓国人拉致に言及して北朝鮮を非難すべきです。
 昨日現在、佐々江局長は「核、ミサイル、拉致を解決して国交正常化する」としかいわず、北朝鮮非難も制裁予告も一切していません。拉致問題が棚上げになる危険性が高まっています。細田官房長官は7月15日、「日本は『安否が分からない拉致被害者は、みんな生存しているはずだから帰すべきであり、それ以外にも拉致された人がいるのではないか』と強く交渉しており、6者協議の場を借りて、さらに強く主張するのは当然だ」と話しています。佐々江局長は官房長官が明らかにした政府の方針に従わないのでしょうか。あるいは、官房長官の発言は単なるリップサービスで政府の方針ではないのでしょうか。このままだと、日本国は拉致問題を軽視しているという危険なメッセージが発信されてしまうと、不安でなりません。

5 ブッシュ政権と拉致問題

 米国議会下院本会議は7月11日、北朝鮮による日本人、韓国人の拉致および被害者を「拘束し続けていること」を非難し、米政府に対して、解決に向けたしかるべき対応を取るよう求めた決議を圧倒的な賛成多数で採択しました。同決議は、「北朝鮮の核問題の解決はきわめて重要であるが、しかしそのことで、北朝鮮政権との今後のいかなる交渉においても、米政府当局者が、拉致問題および他の重大な人権問題を持ち出せないようなことがあってはならない」と核問題解決のために拉致問題を棚上げにしてはならない明確に述べています。また、日本政府がまだ拉致認定をしていない
寺越事件について明確に拉致と断定しています。
特に、韓国人拉致をも棚上げしてはならないと言い切っている点は重要です。
 ブッシュ大統領は盧武鉉大統領と会った三日後の六月一三日に北朝鮮の政治犯収容所における人権侵害を全世界に告発しつづけている脱北者姜哲煥氏をホワイトハウスに招待して四〇分間親しく会談を行い、北朝鮮の人権問題に冷淡な韓国政府を批判しています。
 日本が断固たる対応を取れば、かならずブッシュ政権、韓国の良識的保守派をはじめとする世界の自由と人権を尊重する大多数の支持を得られるのです。
 ブッシュ政権は「金正日は悪だ」と明言しています。ところが、日本、韓国、中国、ロシアはすべて、その認識を表明していません。ブッシュ政権は孤立しているのです。
 とくに、小泉首相は金正日テロ政権を直接的に非難せず、制裁を発動しません。
「日本人拉致問題の解決なくして、国交正常化はあり得ない。核、ミサイル問題を包括的に解決するという日朝平壌宣言の立場は変わらない。国交正常化してから経済協力だ」としか言わないのです。金正日政権に対して抗議したり、「悪」を糾弾したりしないのです。それどころか、田中均外務審議官は北朝鮮に対する外交戦略について「まず互いの共通利益を作り、そのうえで協議や交渉をし、国際関係を作って結果を出す」と語っています(朝日二〇〇三年五月二三日)。テロとの戦争を戦うブッシュ大統領からすれば、テロ政権と共通利益をつくるなどという発想は、利敵行為そのものです。しかし、小泉首相は現在に至るまで、田中審議官のいうような朝鮮外交を続けています。同盟国であり、もっとも北朝鮮の脅威を受けている日本がそのような姿勢だから、アメリカも日本が対北単独制裁に踏み切ることに消極的反応を見せたのです。

6 国際制裁へのステップ、クゥートができたことが日本にできるのか

 今回の6者協議が成果を上げなければ、国連の安保理事会で北朝鮮の核問題が議論されることは間違いないでしょう。日本は外交力を駆使し、その決議のなかに「日本人、韓国人拉致被害者を全員帰さない限り経済制裁をつづける」という文言を入れる必要があります。そこには当然「北朝鮮が核開発をやめない限り経済制裁をつづける」と書かれるだろうが、拉致問題を併記させることが重要なのです。
 アメリカのイラク攻撃の根拠になった国連安保理決議1441号(2002年11月8日、中国ロシアも含む全会一致で成立)には「拉致」が入っています。「安保理はイラク政府がイラクによって不当に拘禁されたクウェート人や第三国国民を、送還あるいは消息確定に向け協力すべきとした(累次の)国連決議をないがしろにしてきたことを遺憾とする」と明確に書いてあります。クウエートができたことを日本ができるのか、国家としての日本の姿勢が問われています。そのためにはまず日本が単独で制裁をかけておくことが絶対不可欠です。
アメリカはリビアによる旅客機爆破テロに対してまず自国で制裁をかけ、その上で国連の安保理に持ち込み国際的な制裁をかけました。日本もまず一国で制裁をかけることです。自国でかけていなかったら、他国の協力は得られないです。

7 小泉首相に制裁発動を強く求めます。

 すでに国会は制裁法を成立させており、衆参両院の拉致特委は制裁発動を決議し、拉致議連、自民、民主、公明3党の拉致対策本部も制裁発動を訴えています。
 国民の大多数も制裁発動に賛成しており、その意思は500万を超える署名となって政府に提出されています。
 家族会も、愛する肉親が北朝鮮で囚われている苦しい立場でありながら座り込みまでおこなって制裁発動を求めています。
 改正外為・貿易管理法により北朝鮮への送金と貿易を全面的に停止していただきたい。特定船舶入港阻止法により万景峰号をはじめとするすべての北朝鮮船舶の入港禁止を行っていただきたい。
 国家犯罪である拉致が解決していないのに、北朝鮮国会議員(最高人民会議代議員)である朝鮮総連最高幹部6人は日朝を自由往来しています。最高人民会議代議員である総連最高幹部6人、徐萬述(朝鮮総連中央本部議長)、許宗萬(朝鮮総連中央本部責任副議長)、梁守政(朝鮮総連中央本部副議長・在日本朝鮮人商工連合会会長)、金昭子(朝鮮総連中央本部副議長・在日本朝鮮民主女性同盟中央本部委員長)、朴喜徳(在日本朝鮮人商工連合会顧問)、張炳泰(朝鮮大学学長)への再入国許可を取り消してください。
 また北朝鮮・総連への不公正な優遇措置の適正化を行っていただきたい。
 様々な証拠や証言から拉致であることが間違いない寺越事件、小住健蔵さん、福留貴美子さん、安明進氏が北朝鮮で目撃したと証言している古川了子さん、加藤久美子さんなどの拉致認定を早急に実現して欲しいと考えています。
                               以上
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