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2005年8月 7日 (日)

北朝鮮難民と人権に関する国際議員連盟 第2回総会 

各種決議文の紹介と略報告      原 良一さん  投稿日: 8月 3日(水)

 去る8月1日、三浦さんから何回か紹介されていました「北朝鮮難民と人権に関する国際議員連盟 第2回総会」に参加してきました。

 主催者は、日・米・韓・モンゴルの各国会議員、日本では民主党、韓国ではハンナラ党の議員が主導しましたが、自民党、ヨルリンウリ党議員の参加も実現し超党派の体裁を整えることができました。

 参加NGOでは、日本がこの会議の開催の実現を主導した難民基金(北朝鮮難民救援基金)を初めとする「北の独裁者と戦う主要四団体」、守る会(北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会)、RENK(救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク)、救う会(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)に加え、脱北帰国者支援機構(代表:坂中英徳元東京入管局長)、特定失踪者問題調査会、韓国はドゥリハナ宣教会(脱北者支援、彼らの韓国への逃亡支援の団体)、脱北難民保護運動本部、脱北人権連帯、韓国拉致被害者家族協議会、米国がHelping Hands Korea、ビルマ(軍政側呼称「ミャンマー」)からWomen’s League of Burma、Kachin Women’s Association、 Democracy for Kachin Nationalが参加しました。

 総会は午前中が、難民基金の加藤博事務局長司会の下での、各NGOによる現状報告でした。Helping Hands代表のティム・ピーターズ氏、ご父君が脱北者への支援活動中に中共当局に逮捕されてしまったグレイス・ユン女史(父娘共に米国籍を取得した韓国人)、難民基金が里親になって保護していて、無事韓国入りを果たした李光龍(リ・グァンリョン)氏(元ヤクルト、現メッツの石井一久投手に似ています(^^))、李正淑(イ・ジョンスク)女史(脱北者)、申貞愛(シン・ジョンエ)女史(2年前守る会が救出に失敗して、山田文明代表共々逮捕され、「朝鮮民主主義人民共和国」に送還された脱北者の母親)、崔佑英女史(チェ・ウヨン、韓国拉致被害者家族協議会会長)、横田滋氏(家族会代表)、西岡力氏(救う会常任副会長)、真鍋貞樹氏(特定失踪者問題調査会専務理事)の各氏が発言しました。

 午後からは、各NGOの報告を受けて、各国議員のスピーチとディスカッション、特筆すべきは、この会議のためだけにデニス・ハスタート米国下院議長がわざわざ来日してスピーチをしたこと。外交儀礼上からも(同等の立場として)対応して出席すべき河野洋平衆議院議長が、曲折の末に出席を見送ったことと併せ、記して報告します。

 その後、各種宣言を朗読、拍手で採択・承認。コーヒーブレイクの後、中国における脱北者の受難を描いたドキュメンタリー映画「ソウル・トレイン」(「韓国ソウル行きの列車」という意味。音楽や魂のソウルと混同しやすいので、邦題を変更したらとアンケートに書いて出しました)の上映会と製作者ジム・バターワース氏らとの質疑応答。最後に米国下院議長の来日の報に急遽参画したらしい外務省主催のレセプション、という次第でした。

 略報告と併せ、同会議で採択された決議も全文紹介します。こちらでは、既に管理人様が、救う会ニュース経由で紹介しているので重複になりますが、ご容赦ください。

 まず、午前中のNGOの報告に基づく決議



  北朝鮮難民と人権に関する国際議員連盟 第2回総会
   東京国際会議NGO決議  2005年8月1日
  北朝鮮による人権侵害の停止、拉致被害者の即時解放、
  中国政府による北朝鮮難民の強制送還中止勧告を求める決議

 北朝鮮難民と人権に関する国際議員連盟 殿

 署名NGO

日本  北朝鮮難民救援基金
    北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会
    救え!北朝鮮民衆緊急行動ネットワーク(RENK)
    脱北帰国者支援機構
    北朝鮮による拉致被害者家族連絡会
    北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会
    特定失踪者問題調査会

韓国  ドゥリハナ宣教会
    脱北難民保護運動本部
    脱北人権連帯
    韓国拉致被害者家族協議会

米国  Helping Hands Korea
    North Korea Freedom Coalition

ビルマ Women’s League of Burma
Kachin Women’s Association
    Democaracy for Kachin National


 2005年8月1日、私たち日本、米国、韓国、ビルマのNGOは、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国) の深刻でさまざまな非人道的人権侵害の停止と拉致被害者の即時解放を要求することに合意した。また、北朝鮮の人権侵害の実情に理解を示し、了解を与えているというと疑いを禁じえない中国(中華人民共和国)の態度を深く憂慮し、以下のことを確認した。

 脱北者は、飢餓から逃れ食糧を求める自由を探して越境するが、中国政府はこれを「難民」と認めず、「不法滞在者」「不法入国者」として逮捕・拘束・強制送還している。強制送還された脱北者は、北朝鮮刑法47条によって政治犯として厳しく処罰され、人権が認められない。

 また北朝鮮政府は、工作員を欧州、日本、韓国などに派遣し、誘引拉致を繰り返している犯罪国家である。その上、いまだに多数の拉致被害者を抑留し、偽遺骨などを提供し、生存を否定するという欺瞞を続けている。

 中国政府は、苦難にあえぐ脱北者と脱北をする人道支援家の不当逮捕を引き続きて行っている。拘束した脱北者を北朝鮮に強制送還している数々の事実も確認した。これらの行為が「難民条約」の乱暴な侵犯であり、国際条約を無視する態度であり、国際平和と秩序に責任ある立場を占める国連常任理事国の一員としてふさわしくないと考えざるを得ない。

 韓国政府はこれまで、北朝鮮からの脱北者を受け入れ、その数は1万名に近づこうとしている。韓国政府の努力には大きいものがある。しかしながら、北朝鮮難民を受け入れる最大の後方基地である韓国政府の最近の態度は、これまでとは逆に、在外公館で保護を拒否する事件を頻発させている事実も指摘しないわけにはいかない。

 私たちは、世界人権宣言の精神にのっとり、以下の決議を、この国際会議に参加したNGOの総意として発表し、参加した諸国各議員に以下の行動計画に積極的に関与し、実現するよう訴えるものである

1.北朝鮮に対し、国際議員連盟がイニシアチブをとり、人権査察団を早期結成し、北朝鮮に査察の受け入れを迫り実現してください。査察結果は、報告書の形で全世界に公表してください。想定する査察項目は以下の通りです。

(1)収容所(管理所)の実態調査、収容者の名簿、生存者、死亡者のリスト。
(2)中国から強制送還された者の北朝鮮での待遇・社会復帰状況の調査。
(3)北朝鮮鮮以外の国から拉致された被害者の実情調査。
(4)日本から北朝鮮に渡った元在日朝鮮人の行方不明者、日本人配偶者の安否調査。

2.人権査察団は、国際機関と協力し以下のことを調査してください。
(1)衛星写真や元強制収容所収容者などの証言に基づきその存在が明らかになった全ての政治犯収容所における実態調査と政治犯の釈放に尽力してください。
(2)国際的な援助食糧の適切な配分、調査などを徹底的に調査し、国際的にその結果を公表してください。

3.人権査察団の受け入れを拒否した場合、北朝鮮へのあらゆる支援を国際社会が停止するよう勧告してださい。

4.中国政府は、北朝鮮の飢餓と抑圧体制に耐えかねた脱北者や彼らを救援する人権支援家を不当に逮捕し、脱北者は北朝鮮に強制送還するという人権抑圧体制の共犯者となっています。平和とスポーツの祭典であるオリンピックが、人権抑圧によって多数の生命が失われ、虐待を看過する状況で開催されるのを容認しないと宣言してください。

  世界各国オリンピック委員会に2008年北京オリンピックの開催地変更を勧告してください。

5.人権査察団に適切な形で関係NGOの参加を考慮し、各国議員団は各政府に査察費の拠出を働きかけ、また北朝鮮から脱出し隣国に避難する脱北者に対して北朝鮮に送還せず保護するよう各国に働きかけてください。

6.脱北者の定住・定着のために各国は法を整備し、自立援助体制を確立してください。

7.日本、韓国、米国をはじめとする関係国政府に拉致問題解決のために経済制裁発動を含む全ての努力を行うことを議員の立場で求めてください。

(注 記)
 原文では、算用数字部分がローマ数字ですが、ネット上ではローマ数字は機種依存文字で、ウィンドウズ以外では正しく表示されない恐れがあるので、通常の算用数字に、それに伴い、算用数字で表現されている部分は( )付きに改めました。ご諒承ください。


 次いで、当日の動議で、各国議員による共同宣言に付随して採択されたアクション・プログラムが下記です。



  アクション・プログラム

1.拉致問題は韓国、日本の重大な問題であり、議会が政府に対し問題解決の必要な枠組みを提供するよう要請するとともに、両国政府に対し、北朝鮮に対し毅然とした対応を行うことを要請する。

2.米国議会において北朝鮮人権法が採択されたことに伴い、日本と韓国においても北朝鮮人権法成立のために最善を尽くす。

3.各国代表団は、それぞれの議会に対し、共同宣言(下記)の趣旨を働きかける。

4.国際議員連盟は、北朝鮮及び中朝国境に調査団を派遣し調査を行なうとともに、国連等に人権状況調査を要請する。



 最後にこれらを受けて、採択された共同宣言が下記です。



   共 同 宣 言
  北朝鮮難民と人権に関する国際議員連盟 第2回総会

 1948年12月10日に第3回国連総会において採択された世界人権宣言第一条に「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利において平等である。人間は理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神を以って行動しなければならない」と記されているように、各人の基本的人権は、いかなる環境にあろうともこの地球上に住むすべての人々の尊厳を守るために等しく保障されなければならない。

 それ故、我々は北東アジアにおける基本的人権の普遍的な保障および北朝鮮難民の諸権利の保障を目的として、2年前に、アメリカ合衆国、英国、オーストラリア、大韓民国、モンゴル国、および日本国の国会議員による国際議員連盟を結成し、各国政府及び国際社会において真摯な働きかけを続けてきた。昨年米国において成立した「北朝鮮人権法」や、韓国ならびに日本における同趣旨の立法に向けた取り組みはその代表例である。

 しかし、我々の努力にもかかわらず、北朝鮮をめぐる人権、人道上の問題は、国内の圧制、強制収容所における人権蹂躙、脱北者への過酷な措置、また、韓国人や日本人を対象とした拉致問題の未解決が示すように、憂慮に堪えない状態が続いている。

 我々「北朝鮮難民と人権に関する国際議員連盟」は、国益、党派、イデオロギーの違いを乗り越え、北朝鮮国民および脱北難民の生命を守り、人権を保障するためあらゆる国際的な努力を行うことをここに宣言する。

 第一に、北朝鮮当局に対し、国内における人権侵害を含むあらゆる非人道的行為を即時停止し、同国における人権状況の改善に向けた具体的な措置を講ずるよう要求する。

 第二に、飢餓と圧制の恐怖から逃れるため、自由を求めて越境してきた「脱北難民」を国際法上の条約難民と認定せずに「不法入国者」として逮捕、強制送還し、のみならず、彼ら・彼女らに人道的な支援を提供している人々をも不当逮捕、拘禁している中国政府に対し、当該難民およびその人道的支援者を、同国が当事国となっ
ている国際条約に則って人道、人権に配慮しつつ適切に保護すべきことを要求する。

 第三に、国連および国際機関に対し、北朝鮮における強制収容所の実態をはじめ全般的な人権状況を調査し、また、中朝国境付近に逃れてきた脱北難民の生活環境や衛生状況などの実態調査を行い、これらを世界に公表することを通じて、北朝鮮国内および脱北難民に関わる人権状況を改善するための国際的な努力をさらに強化するよう要求する。従って、北朝鮮に対するいかなる国からの人道援助も、政治的・軍事的目的ではなく、あくまでも北朝鮮国内の人権状況を改善させる目的で行なわれなければならない。

 第四に、韓国や日本など関係諸国議会に対し、速やかに「北朝鮮人権救済法」を成立させ、その侵害状況を明らかにし、人権救済を促進し、また人権救済を目的に支援活動を行う国際機関、政府機関およびNGO組織を支援するために必要なあらゆる措置を講ずることを要求する。

 第五に、6者協議の場で北朝鮮の強制収容所、拉致問題等の人道的な問題の解決を議題として取上げることを要求する。


豚金一派(北朝鮮)支配領域内と、彼奴らに拉致・拘束された被害者の人権問題そっちのけ、無理を通して道理を引っ込ませ、豚金一味(北朝鮮)の国体保障=北朝鮮の敵対階層(=奴隷階層)抹殺政策容認の、6カ国協議に失望感と焦燥感を強めていた私たちにとって、今回の会議は大変勇気づけられるものでした。

 日本での会議の開催に尽力し、多大の貢献をした、議員では民主党、NGOでは北朝鮮難民救援基金のコアスタッフ(投稿者はただの下っ端会員汗)皆様には、深く感謝します。

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