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2005年10月29日 (土)

蓮池 透さん(青梅・2005/10/29)

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みなさんこんにちは。
本日はお招き頂きましてまことにありがとうございます。私は、このようなところから皆様に偉そうにお話させていただく身分でも、立場でもございませんが、これだけは日頃から知っておいて頂きたいと言うことがありますので少しだけ時間を頂きたいと、こいうふうに思います。

拉致問題につきましては会場にお越しのみなさま、そして広く国民の皆様の関心を集めご支援を頂いておりますことに、この場をお借りいたしまして、厚く御礼申し上げます。
また、皆様のおかげをもちまして、弟家族が帰国できましたこと重ねて御礼申し上げたいと思います

しかし(強く)、5人が日本に帰ってきたとき「自分たちだけ帰ってきて忍びない」ということをいっておりました。3年たって今も、その気持ちにはいささかの変わりもないというふうに思っております。

彼らも、彼らの家族も、私たちも、めぐみちゃんたち、まだ帰ってこられない方が帰ってこない限り、心の底から喜びに浸ることは出来ません。

さて、うちの弟夫婦やめぐみちゃんが北朝鮮に拉致されましてから、四半世紀という時間が、流れました。四半世紀と言えばオリンピック六回分です。生まれた子供が成長して、ばりばり働き出す年月に相当します。しかし未だに、この拉致問題は解決しておりません。
これほど長きにわたって、日本人の人権が侵害され続けています。

昭和53年の7月31日、弟たちは拉致されました。
若者がデートし、お年寄りが散歩する、そして子ども達が水遊びをする、誰もが行くような海岸で、不法侵入してきた北朝鮮の工作員の手によって暴力的に拉致されました。
これ以上の人権蹂躙、凶悪犯罪、国家主権侵害、国家テロというのはないと思います。
と言うことは他のどなたにも拉致される危険性があったということではないでしょうか。

そしてその状況はわが国において継続している可能性があるかもしれません。
もしみなさま、みなさまのご親族が拉致されたとしたら、みなさまが日本国民である限り、私たちとおなじめにあうのは間違いないというふうに思います。

弟たちは自分たちがどのように拉致されたかというのは、当初は余り語ろうとしませんでしたが、ようやく重い口を開きました。その中で、妻の祐木子は『ガムテープで体中をぐるぐる巻きにされてボートに乗せられた。ガムテープの隙間から故郷の柏崎がどんどん、どんどん小さくなっていくのが見えた。』という言葉には、私は心を引き裂かれる思いがしました。いったいどういう気持ちで連れ去られたのか、到底、私達には想像ができません。
北朝鮮で24年間、祖国日本に帰るという究極の自由を剥奪され、わずかに与えられた自由らしきものの中、希望のない、全くの不毛な暮らしを強いられてきたのです。

弟は言っています。『北では自分の意思で動いたことなど、一回もない。まったく自由がなかった。』と。
『会いたい人に会いたいときに会える。いきたいところにいける。好きなように自由にそういうことができる。兄貴にとっては平凡なことかもしれないけど、われわれにとってはそれが一番の幸福なんだ。日本に帰ってきて一番幸せなのはそれだ。』と言いました。
それほどまでに彼らはぎりぎりの生活をしてきたのです。
まさに、サバイバル生活です。

そして、まだ、同じ想いを持って、同じ状況で生活している拉致された日本人とその家族が大勢いることを忘れてはならないと思います。

一度だけ弟に聞いたことがあります。まだ子供たちが帰っていない状況の中で、『今、日本で暮らしている、生き甲斐は何だ』 と。
弟は、『兄貴、そんな酷な事、聞くなよ』と言ったあとで、『そんなもん、ねぇよ』と言いました。『でもな、兄貴、俺たちはなぁ、絶対くじけないんだ。何事があってもくじけないというのが、24年間で身に染み付いてしまったんだ。』ということを、私に、怒るように言いました。
私はそのようになってしまった弟を不憫に思うと同時に、なんてつまらない質問をしてしまったんだと、後悔しました。
そして弟の24年間の生活など、自分には決してわからないと思いました。実際にそういう目にあった人間でなければわからない。それを簡単に理解できるなどということをいったら、彼らに失礼だというふうに思うようになりました。

さきほど横田さんからも話がありましたが、この拉致問題、拉致事件というのは、憲法にも詠われ、国際条約にも規定されている人権問題です。四半世紀以上にわたって、人権が侵害され続けているのです。世の人権を標榜する専門家の方々は、なぜ声高に『日本人の人権を守れ』と仰って頂けないのでしょう?
不思議でなりません。

本日は、関係者の方々がみえていらっしゃいますが、人権擁護局、人権、人道家という看板を掲げている、法務省、外務省、その責任のもとに、その職務を全うしていただきたいというふうに、私は思います。

「基本的人権の保障」などということがよく言われますが、私はそういう言葉を聞くと、むなしさを感じます。
果たして、この国において、「基本的人権の保障」などあるのか。こと、拉致問題については存在するのでしょうか?誰がそれを保証してくれるのでしょう?四半世紀以上、帰りを待ち続けて、家族はみんなそう思っていると思います。

うちの弟は決して裕福とは言えませんが、普通の家庭に次男として生まれました。
確かに、小学校時代、交通事故にあい、両足切断の危機に瀕したことがございましたけれども、それも克服して、中学校時代には野球部のキャプテンをするようになりました。
そのようにして、立派に成長して幸福な時を送っていたと思います、あの忌まわしい昭和53年7月31日の夕方までは。

弟の姿が見えなくなった、その時の気持ちは一言ではあらわせません。
悲しみ、苦しみ、諦め、悔しさ、怒り いろいろな気持ちが、私達の心の中で渦巻いていました。

「基本的人権」というのは、何事にも犯されることのない生命、自由、幸福を追求する権利です。

拉致された人間は、その権利を一瞬のうちにすべて奪い取られました。

北朝鮮による日本人拉致は、基本的人権侵害の極みです。
そして、何事にも犯されることのない権利が、他国によって侵されているわけですから、これは、国家主権の侵害です。
さきほども言いましたが、到底許すことのできない凶悪犯罪であり、国家テロであります。

基本的人権を保障するのは国家の役割であります。
日本国憲法は拉致問題に関していえば、専守されていないのではないでしょうか?
私はそう言うようなことをする北朝鮮という国家を許すことができませんし、まだ解決できない、この国家の責任というのは甚大だというふうに考えております。

三年前の9月17日に、小泉総理が金正日総書記と日朝首脳会談をおこないました。拉致問題がやっと、事実だと言うことが世間に知れ渡ったときです。
それ以前は「でっち上げ」だの「疑惑」などいわれ、ひどいときには署名活動をやっている、横田めぐみちゃんの写真の看板が蹴飛ばされたりしたときもありました。

われわれは、「これで国家の対応も変わるだろう」、「新たなスタートだ」と思ったわけですが、ご覧のとおり5人とその家族が帰国しただけで、他の方々の問題は3年前と全く変わっておりません。中には後退させようとするような政治家や官僚がいるほどです。

日朝首脳会談に望んだ時に、小泉総理の頭の中に、横田めぐみちゃんという名前があったのかどうか?あの平壌宣言にサインするときは、どうだったのでしょうか?

考えても見てください。もし日本で、国内で、13歳の少女が誘拐されて、それが死んだといわれ、犯人が目の前にいたら、みなさんどうされますか?
誰だって怒ると思います。
私は(もう3年前の話はするなと言われるかもしれませんが)、あのときにもっと、日本国家として怒りを示して欲しかったです。非常にあの時は残念に思いました。

今考えて見ますと、3年前の、9月17日に、あの北朝鮮が拉致を認め、謝罪した。これはひょっとすると、日本と北朝鮮が結託して、あの一日で拉致問題を終わらせ、封じ込めようとしたのではないかというふうに思っております。

<5人生存8人死亡>という情報は、北朝鮮が言った情報です。
それを、まぁ、生存は別にして、8人死亡という裏も何もとらずに、確認もせずに、やれ謝罪だの、やれ援助だのという、平壌宣言にサインしてしまったんです。

小泉総理はあのときに<5人生存8人死亡>という、それぞれの人間の名前が、頭の中にあったのでしょうか?5対8というただ数字の十把一絡げだったのではないでしょうか?
そこには、拉致された人々の人権や人格や尊厳などは、まったく存在しなかったのだというふうに思います。

北朝鮮からの伝聞情報を日本政府は、われわれをマスコミから隔離して、家族に断定的に伝えました。まず最初に横田さんご一家が、外務省の施設で、個室に呼ばれて、『非常に残念だが、めぐみちゃんは亡くなった。』とはっきり断定、断言、日本政府はしたのです。
つまり、5人は生きている。しかし、北朝鮮が良いといっている。だから会いたければ、日本から北朝鮮に行きなさい。

事実帰ってきた5人は、帰ってきたばかりの時は、北を礼賛ばかりしていました。会う日と会う人に、「北に来い。北に来い。」 と言っておりました。

それでは、死亡したと言われる8人はどうする?
政府が家族に断定的に伝える。
つまり「葬式を出してあげなさい」「まことに残念だが、いつなくなったか、どういう原因でなくなったか、わからないけれど、とにかく亡くなったんだ、だから葬式をだしてやりなさい」と。

マスコミも何の裏もとらずに、号外まで出しました。
家族会ではなくて遺族会になってしまいました。
そしてあるテレビキャスターは『横田めぐみさんのご冥福をお祈ります』とまで、テレビで言いました。
金正日に盲従する北朝鮮国家ならいざしらず、お上が「お前の娘、息子が死んでる」と言って、信じる方がおかしいと、私は思います。

そういう幼稚で、誰でも信じないような、誰も信じないようなシナリオを書いて、家族を黙らせることができるというふうに思っていたら、間違いだと思います。

これで拉致問題は、たぶん、北と、どっかわかりませんが、外務省の一部人間=日朝国交正常化こそが最大の国益だというふうに、我々と根本的に価値観の違いを持ってる人が、考えたんでしょうがまぁ、そういうシナリオはまさに崩れた。

金正日は、次の手に出てきました五人を一時帰国させて、家族を北朝鮮に呼ぼうと。それも失敗に終わりました。外務省は言っていました。『2週間をめどに返してくれ』と。いわば約束破りです。そういうボタンの賭け違いがその後の交渉を膠着させた原因だというふうに、私は思っています。

これは北朝鮮の犯した犯罪ですから、交渉とか協議ではないのです。
「日本人を返せ」と要求しなければならないのです。

一年経って、ようやく日朝審議官級の協議が始まろうとしています。
日本政府に戦略があるのでしょうか?また間違った国益を重んじている外務官僚がいないとも限りません。

日本政府にきちんとした戦略があるのでしょうか?

弟たちは知りうる限りの情報を提供しています。
国はその情報をよく分析、解析して、アメリカあるいは韓国、中国から情報を収集して、<拉致被害者が今北朝鮮内の何処にいるの><どういう生活をしているのかとか>いうところまで確認した上で北朝鮮側に、「ここにこうやっているからこの人を帰せ」というようにしておかなければならないのです。

本当に、今回が正念場だといふうに、私は、思っています。

今までの北の謀略、いや、日本も絡んでいたかもしれません。
そういう狂ったシナリオは、みなさまの大きな声でのおかげで、みごとに崩れました。
もしそれがなければ、今頃、日朝国交正常化がなって、莫大な援助金が北朝鮮に渡っていた可能性も、あります。

今までは、北朝鮮に対して「これをあげるから、何かを出して」というやり方で、米をどんどん送り続けました。
従ってイニシアチブ主導権は全て北朝鮮に握られていた。

そうではなくて、主導権を日本側が握って、「これを出さなければ、われわれは何も出さない。」「これを出せば、これをあげるよ。」「これをださなければ、制裁だ」と。

全知全能にかけて、戦略を、私は、練ってほしい。
 
何事にもくじけないと言っている弟たちに負けないように、我々も頑張っていきたいと思いますので、皆さんも是非、政府、外務省の行動、言動を、冷徹に見守っていただきたいと願ってやみません。

ご静聴ありがとうございました。

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コメント

コメントをありがとうございました。

3日の日朝交渉に向け、miowさんがブロクで書かれているような<戦略>を政府が持っているのか、不安です。
新任の麻生さんが、どのように拉致に取り組むのか、透さんのことば=<冷徹に>見守りたいと思います。

投稿: 金木犀 | 2005年10月31日 (月) 19時47分

Blue jewelさん 金木犀さん
コメント and TBありがとうございました。
蓮池透氏の青梅集会は、ぜひ行こうと思ったのですが、気付いた時、既に応募締め切り以後でした。
ありがたく拝見させていただきます。

投稿: minow175 | 2005年10月30日 (日) 21時30分

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