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2005年12月18日 (日)

北朝鮮問題」拡大版(『諸君』1月号より)

蒼き星々掲示板 安倍貞任さんの投稿より

北朝鮮問題」拡大版(『諸君』1月号より)  
  月報「北朝鮮問題」拡大版(『諸君』1月号より)

 中国に「植民地」化される哀れな北朝鮮

 援助の見返りは労働力。日本との国交正常化で肥え太ろうとする中朝の手に乗るな

 荒木和博 特定失踪者問題調査会代表・拓殖大学教授
 青木直人 ジャーナリスト


 荒木 1年ぶりの日朝協議に続いて、6カ国協議が再開され、北朝鮮をめぐる情勢は大きな曲がり角に来ています。ところが、新聞やテレビなどの報道をみていると、そもそも議論の前提に大きな誤解が潜んでいることが少なくありません。なかでも代表的なものを挙げてみましょう。

  一  「中国は同盟国である北朝鮮、およびその外交を支持している」

  二  「金正日独裁体制はなかなか崩壊しない」

  三  「アメリカは北朝鮮を軍事制裁する用意がある」

  四  「日本には6カ国協議をリードしていく力はない」・・・・・。


 こうした誤った前提に立ってどれだけ議論を積み重ねてみても、誤った結論しか出てこないのは当然です。今日は、月報『北朝鮮問題』拡大版として、中国を中心に東アジアの政治経済を深く取材している青木さんと、こういった『北朝鮮問題の常識のうそ』を指摘しながら、北朝鮮、そして東アジア外交において、日本がとるべき立場とは何か、論じて生きたいと思います。

 まず、「中国は同盟国として、北朝鮮および、その外交を支持している」というウソですが、確かに半世紀以上前の朝鮮戦争以来、中国と北朝鮮は安全保障上の利害を一にする同盟国でした。しかし、近年、その関係は大きく変わっています。

 青木 これまで中朝の同盟関係を象徴する言葉に、「血で結ばれた友誼」「中朝両国は唇歯の関係」というものがありました。これらは中朝関係についてのみ使われる特別の言葉で、ほかの国との関係で使われることはほとんどありません。

 荒木 「血で結ばれた友誼」とは、朝鮮戦争をともに戦った間柄を意味しています。「唇歯の関係」とは、唇と歯のように非常に近い関係であり、一方が滅びると他方も危うくなる、というわけですね。

 青木 この二つの言葉について、「人民日報」の過去50年分を検索してみたんです。すると、朝鮮戦争の後、1955年から59年までの間には、153件登場しています。60年代になると542件、70年代には763件と、両国の関係の深まりを表すように増えていくのですが、80年代になると279件に激減する。それ以降は、90年代が104件、2000年はわずか5件で、2001年からは1件も見当たりません。

 荒木 中国が経済開放政策を始め、冷戦が終焉すると、どんどん減っているのは象徴的ですね。

 青木 両国の関係はどう変わったのか。一言で言えば、同盟国として、少なくとも形の上では「水平の関係」にあったのが、「垂直の関係」、すなわち支配する中国と従属する北朝鮮という上下関係があらわになってきた。

 荒木 言い換えると、安全保障を軸としたイデオロギー的・軍事的同盟から、経済的支配と従属への大転換ですね。ここを見誤ると、6カ国協議などでの中国の行動がまったく読めなくなってしまいます。


 どんどん進む経済支配


 青木 こうした変化を如実に表していたのが、2005年10月の胡錦濤の北朝鮮訪問でした。まず際立っていたのが胡錦濤の北朝鮮に対する、冷淡とも思える態度です。そもそも胡錦濤は党総書記に就任してから3年もの間、1度も北朝鮮に足を踏み入れてなかった。しかも、金正日が熱望していた10月10日の朝鮮労働党60周年のセレモニーにも参加しなかった。

 荒木 金正日は中朝の伝統的な同盟・友好関係を演出したかったのですが、中国はそれを拒否したわけですね。

 青木 そうです。おまけに今回の訪朝は、ベトナムとセットでの2カ国訪問でした。これも、中国の歴代最高指導者たちが「唇歯の関係」の隣国、北朝鮮に単独訪問してきた”伝統”から考えると異例のことです。

 しかも、肝心の首脳会談は1回しか行われなかったうえに、会談の席で金正日はペーパーを出して読み上げるだけ。ここで金正日は6カ国協議出席を明言させられました。つまり、首脳会談は一種のセレモニーで、金正日には胡錦濤と実質的な交渉をする機会は与えられなかったことを意味します。中国側が自分たちの以降を一方的に通達するための場に過ぎなかった。

 荒木 中国側の冷淡さとは対照的に、金正日は大サービスでしたね。

 青木 空港までじきじきに出迎えたばかりか、見送りもした。しかも空港に赤絨毯まで敷いて、閲兵式を行い、沿道には万単位の平壌市民を並べて、旗を振らせた。金正日がここまで一方的に頭をたれる「叩頭外交」を行ったのは初めてじゃないでしょうか。

 荒木 金正日は、中国に対しても、時折非礼とさえいえるような対応をしてきましたからね。5年前の2000年10月に、中国の国防相だった遅浩田が北朝鮮を訪れましたが、ちょうど当時のオルブライト米国務長官の訪朝と重なったために、金正日は先に到着した遅浩田をほっぽらかして、オルブライトとだけ会談した。遅・金会談が実現したのはなんとオルブライト画帰国してからだった(笑)。

 青木 胡錦濤訪朝の前に、中国外務省の孔泉という報道官が、総書記訪朝の目的について、「新しい状況下における関係を強化するため」と答えていますが、この「新しい状況下」というのがキーワードなんです。

 これまで北朝鮮は、中国からの無償援助を当然のように受け取ってきました。それを中国側は「これからはそうはいかない、見返りを払ってもらう」と詰め寄ったのです。しかし北朝鮮にはお金はない。その代わり「資源と安い労働力を差し出せ」というのが、小泉のいう「新しい状況下」にほかなりません。

 さきほど、今回の胡錦濤訪朝が、ベトナムとの2カ国訪問で、ベトナムからトンキン湾油田開発の合意を取り付けています。つまり資源外交の一環として両国を訪問したのです。

 今中朝の国境地帯などで、両国の合弁による資源開発が進んでいます。これは形の上では中朝の共同使用ということになっていますが、その実態は、中国が資本と技術と輸送インフラを提供し、北朝鮮の資源と労働力を使うというものです。ちょうど西側先進諸国と中国の経済関係を、北朝鮮にあてはめたようなものですね(笑)。

 荒木 なるほど、確かに北朝鮮では中国製品はステイタスですからね(笑)。

 青木 胡錦濤に先んじて、呉儀副首相が訪朝したときに、「中国は北朝鮮の資源開発に20億ドルの投資を行うと約束した」という報道がありました。もし、この話が事実だとすると、中国にとっては非常に大規模の投資になる。

 たとえば、北朝鮮に茂山という町がありますね。日本が朝鮮半島を併合していた当時、北朝鮮最大級の鉄鋼山を開発した。ところが資金とエネルギー不足のため、私が6年前に言ったときには、工場からまったく煙が出ていなかった。それが今では、中国が北朝鮮に50年間の共同開発を認めさせ、茂山で採鉱した鉄鉱石を中国に運んでいます。中国との国境を流れる豆満江の対岸に、中国の精錬工場があって、そこを茂山と連動させている。長白山の麓や東海岸の元山でも、同様の工場が中国のイニシアティブで稼動しています。

 荒木 要するに国交を越えて、北朝鮮に中国の経済圏が広がっているわけですね。

 青木 実態に即して言えば、北朝鮮は中国の経済的植民地となっているといったほうがいいかもしれません。さらに中国がもくろんでいるのは、北朝鮮の開発を、上海などの沿海部に比べて開発が遅れている中国東北部、すなわち旧満州地域とリンケージさせることです。

 2002年の秋に発足した胡錦濤―温家宝体制にとって、最大の国内課題のひとつが東北部の再建です。吉林省、黒龍江省、遼寧省のいわゆる東北3省は、満州時代に日本が建設した工場群が基盤として残っており、中国最大の重工業地帯でした。鄧小平の経済開放政策が始まるまではGDPが広東省の2倍あったのに、今では2分の1になってしまいました。外資の進出が遅れているからです。

 その再建のためには外資を呼び込むしかない。外資を呼び込むにはまずインフラを整えなければならない。今、中国は中ロ国境から大連まで中朝国境沿いに鉄道を敷くなど、旧満州のインフラ整備を必死で進めています。そこに北朝鮮開発も絡めようとしている。そして、北朝鮮の次に狙っているのは、実は海の向こうにある日本なのです。

 ロシアと北朝鮮の国境地帯に羅津という港があります。この開発もずっとペンディングになっていたのを、これまた中国は50年の共同使用を認めさせて開発に乗り出しました。その真の狙いは、この羅津を将来的には対日貿易の拠点にすることです。吉林―羅津―日本海側の港と結べば、中国東北部と日本経済は最短距離でつながることになる。

 もうひとつ中国が狙っているのは、北朝鮮の安い労働力ですね。安いといわれる中国の、さらに20分の1の賃金水準ですから、上海や北京などといったコストが高くなった沿海部に対して、東北経済圏は十分競争力を持ちうる。

 注目すべきは、中国の保有する共同使用の権利が50年ときわめて長い設定になっているということです。これが何を意味するかというと、これからの50年間、中国は北朝鮮という国家を存続させつつ、完全に押さえ込む、ということですね。

 荒木 北朝鮮はまさに“国家バーゲンセール”といった状態にあります。10月29日付の「朝鮮日報」によれば、北朝鮮が韓国に対し、「靴を6千万足、服を3万トン、石鹸を2万トンよこせ。その代わり、北朝鮮の鉱物を何でもいいから持っていってよい」といってきた、という。

 青木 何でも売り払うといえば、“首都平壌“すら中国に買い上げられてしまいかねない。というのは、中国に有名な温州商人という投機集団がありますね。彼らは非常に商才があって、経済自由化で巨額の利益を上げてきた。実は、中国のここ数年の不動産バブルの仕掛け人は、この温州商人だといわれているのですが、彼らが平壌市内の一等地の使用権を確保しつつある、といわれています。数年前、平壌の第一百貨店の50年間の営業権を手に入れ、最近では第二百貨店の営業権を握った。その後も、土地や建物の使用権を次々入手している。温州商人が平壌に目をつけたのは、北朝鮮の自由化プラス日朝国交正常化を見込んでのことです。「北朝鮮の核恫喝などの外交政策も転換し、日本をはじめとして世界の国々との国交が成立すれば、平壌が国際都市となって、外貨が入ってくる。ことに日本から多額の経済援助が見込まれるだろう」と、彼らは読んでいる。

 こうした中国の思惑に、北朝鮮は従うほかない。今回の訪朝でも、金正日が胡錦濤を、中国側からの無償援助で作られた大安のガラス工場に案内し、「これだけの援助をしてくれる国はない。心から感謝する。10月を中朝援助友好の月としたい」と最大級のリップサービスを行う場面がありました。それを中国のテレビがニュース映像として繰り返し放映する。さらに胡錦濤が歓迎のパーティで「これからの北朝鮮はどんどん発展していく」と発言しました。つまり、中国の経済支配を受け入れ、自由化していけば豊かになる、と、きわめて露骨に表現したわけですね。

 北朝鮮経済は乾き切った砂のようなものですから、中国からお金が入っても、ごく一部のものが潤うだけで、すうっと消えていく。平壌市内でハンバーガーショップがオープンしたとか、パソコンショップができたと報道されていますが、その消費者層は中朝貿易の権益を握った連中ですね。こうした新興富裕グループに対して北朝鮮の人民軍が食い込んで、上納金を取り立てたり、親族などに中国との商売をやらせて、利権を貪っているのが現状です。

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