« よど号拉致事件を考える市民集会 藤沢速報 | トップページ | ぬくもりは裾野から伝わる~浦和署名活動 »

2006年1月 7日 (土)

青木直人著『拉致処分』のまとめ

『拉致処分』から中韓・米中・日中の絡み合い
蒼き星々掲示板より、安倍貞任さんの投稿から。

正月休みに「拉致処分」(青木直人著)を読みました。
中国専門家としてその立場から中朝、米中、日中、そして日朝という多国間の複雑な絡み合いを一つ一つの海外ニュースを集積して考察しています。

経済成長著しいといわれる中国も、東北三省(遼寧省、吉林省、黒龍江省)は北京、上海に大きく遅れを取っていて、この地域の再開発が中国政府の急務とされています。
この、東北三省はロシア、北朝鮮と国境を接し、それらの国を経て日本海へ通じています。
東北三省の成長には北朝鮮の正常安定、経済成長がどうしても必要であり、そのためには日朝国交樹立と日本から北朝鮮への経済復興資金の流入が、中国政府はのどから手が出るほど渇望していると、著者は指摘しています。

中国政府にとって日本人拉致事件などどうでもよく、中国の国益にとって日朝国交樹立と北朝鮮の復興が大きな関心事。
そうした思惑に対して、日本政府の現在の海外援助がどのような動きをしようとしているかを、アジア開発銀行に焦点を当てて解明しています。

以下は同書、第6章の中の

5 「対中ODA減少の肩代わりをするアジア開発銀行」と
6 「アジア開発銀行に『東北北朝鮮開発援助』セクション誕生」からの抜粋。


 ◆5 対中ODA減少の肩代わりをするアジア開発銀行
 アジア開発銀行(ADB)は北朝鮮への「人道援助」以上に、すでに北朝鮮プラス中国東北地方、それにロシアの極東、韓国など、6カ国協議の参加国が対象となる地域開発構想に前のめりである。

*アジア開発銀行と世界銀行は代表的な国際援助団体で、日本と米国が最大の出資国で(日本の出資比率はADBが16%)、日本は強い影響力を持っている。

東北アジア地域に、今後膨大なインフラ開発支援を予定している。これはもちろん北朝鮮への2カ国支援とはまったく別の援助になる。繰り返すが拉致問題は未解決なまま、援助へのシフト体制だけは着々と進んでいるのだ。国民はこうした事実をまったく知らない。

 政府開発援助(ODA)が私たち国民の血税であるように、日本政府がこれまでADBに対して行った膨大な財政支援の出所は日本国民の税金や財政投融資なのである。そればかりかADBの総裁ポストは創設以来一貫して日本の財務省(旧・大蔵省)の高官が就任している。財務省の植民地というのが霞ヶ関の陰の声なのだ。

 2003年末現在でADBの通常資本財源(応募済み資本ベース)520億ドルのうち、日本の出資額は82億ドル(9020億円、1ドル=110円計算)で、これはシェアで15.8%を占め、米国と共に加盟国中第1位である。
 またこれとは別に内部にあるアジア開発基金201億ドルのうち、日本の拠出額は75億ドル(8250億円・シェア37.3%)で、これも加盟国中No.1の金額である。アジア開発基金というのはアジア各国の中でもバングラディシュなど最貧国を対象にした人道援助資金のことである。北朝鮮の崩壊寸前の経済状況を見れば、日朝平壌宣言にある「国際機関からの人道援助」とは具体的にはこのADBのアジア開発基金を指すと思われる。

 そうなると北朝鮮には日本の円借款や無償援助に加えて、日本が最大の影響力を持つADBから最貧国への融資としてアジア開発基金からも支援が実行されるわけだ。当然ここにも日本人の血税と財政投融資が投じられるのである。

 ADBの融資で気になるのは、近年の中国向け融資の異常なまでの突出ぶりにある。しかも知れは日本政府が中国の経済成長を理由に、中国向けODA、なかでも90%を円借款を減らしはじめた2000年ごろを契機に急増しているのだ。つまり外務省主導のODAは減っているのだが、財務省が影響力を持つADBからの迂回融資は逆にうなぎのぼりなのである。

 具体的に数字をあげておくと(外務省主導の中国向け)円借款が2000年の2143億円をピークにして、03年度が967億円、04年度が859億円と一時の半分以下に縮小しているにもかかわらず、ADBの対中融資は今後、05年から07年までの3年間で毎年15億ドル(約1650億円)、年間で合計45億ドル(約4950億円)もの融資が決定している。毎年1650億円といえば、04年度の対中円借款のおおよそ2倍にあたる数字である。

ADBは日本の財務省が牛耳っている国際団体で、油脂の可否はすべて財務省から出向している日本人総裁の裁量に任されている。だがこれでは円借款削減の補填としてADBの支援がが行われていていると非難されてもやむを得まい。

*木を見て森を見ず、とはまさにこのこと。外務省主導のODA、対中円借款が減って喜んでいられるのもつかの間、対中援助は裏では継続しているし、さらには対北援助がひそかに、財務省を舞台に行われようとしている可能性が強い。

 融資の金額だけが問題なのではない。中味も大問題なのだ。外務省がすでに豊かになった中国には必要ない、自助努力でやってほしいと言う内陸の道路や鉄道など交通インフラに膨大な援助が実施されているのだ。外務省の対中ODAの供与額を見ていくと、2000年を境に、金額が減少し、しかも内陸地域の道路など社会的インフラに対する援助が姿を消している。これに代わって教育や医療、環境対策の案件が増えているのが実情だ。これは経済成長を続ける沿岸部がその富で貧しい内陸を支援するべきで、交通関連のプロジェクトは自助努力でやってほしいという考えからきている。確かに宇宙に有人衛星まで飛ばす実績を持つ中国なら自分のことは自分で解決すべきであり、国際機関からの援助はあくまで人道支援の範囲にとどめるべきだろう。それが日本国民の感覚でもある。

 だが奇妙なことに、同じ日本政府の役所の財務省高官が最高ポストについているADBではそうした日本政府の近年の中国戦略理念に逆らうように、インフラ援助が増大中なのだ。

 このような中国内陸支援以外にADBが熱心に援助を続けているのがメコン開発である。正式にはメコン川流域開発計画(GMS)といい、1992年、ADBの主導で計画されたメコン川流域の地域開発計画を指す。対象国は流域周辺の中国、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムの6カ国である。

 GMSの事務局はADBの内部にあり、プロジェクト数は11。2012年には完成する予定だ。1992年からこれまで35億ドル(約3850億円)の投資が行われている。問題は中国がこの地域プロジェクトをASEAN(東南アジア諸国連合)との経済貿易協力の重点分野と位置づけていることだ。中国の狙いは自国の内陸開発と地域開発をリンクして、地域間の流通・交通ネットワークを拡大し、この地域を自由経済区にして、『中華南部経済圏構想』を実現する」ことにある。そのため、メコン開発大義名分にして、中国の貧しい南部の雲南省にADBからの融資で、最新の高速道路が建設される。具体的には雲南省の省都・昆明からラオスを経て、タイの首都・バンコクにいたるもので全長1800kmに及ぶ。「完成すれば、中国=ASEAN自由貿易圏建設のための主要道路になる」と『人民日報』の記事もその意味の大きさを伝えている。

 読者の方はこうした援助のカラクリがお分かりだろうか。日本の対中ODA、なかでも9割をしめる円借款は2008年度で終了する。そればかりか、今でもすでに中国の内陸にはインフラ整備のための円借款は供与されていない。だが、これが複数の関係国におよぶ「地域開発」プロジェクトとなると、事情は変わる。日本のカネがADBなど国際援助団体から「地域開発」の一環として中国の内陸の道路建設に投じられるのである。明らかにODA中止の補填行為と見るべきだろう。問題はメコン開発が中国・ASEAN経済統合のためのプロジェクトだったように、ADBのなかでひそかに中国東北経済圏構想支援の動きが始まっていることだ。


要約すると

・外務省の対中国援助(円借款)は減少している
・財務省の対中援助は地域開発を主眼に拡大している

こうしたことが現政権下で国民の批判を受けずに堂々と行われている、ということです。


  ◆6 アジア開発銀行に『東北北朝鮮開発援助』セクション誕生 

 2005年10月、実はADBのなかに東北北朝鮮開発援助を想定してあるセクションが誕生している。「地域経済統合室」という。

 実はこれは北朝鮮と日本や米国が正常化した後に、ODAによる北朝鮮支援とは別に、中国を含む東アジア経済圏構想にADBが援助を行うための布石なのである。

2005年9月、吉林省長春市で開かれた投資国際博覧会で中朝国境を中心にした「大豆満江開発計画」が合意された。参加国は中国、ロシア、韓国、北朝鮮、モンゴルの5カ国プラス日本である。先の中国、インドシナの開発が開発と表現されていることに注目してほしい。つまり「大豆満江開発」とは東北アジア版の「メコン開発計画」なのである。

 ADBはなぜここまで中国援助に前のめりになるのか。私(著者)はそもそも黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁の中国間が問題なのではないかと思っている。黒田総裁は、「中国は覇権主義国ではない」と明言するほど、親中国官僚なのだ。しかし、東シナ海の中間線における中国側の不当な資源採掘、尖閣列島を巡る領有権問題、度重なる反日デモ、日本に向けられたミサイル、台湾に対する軍事的恫喝、16年間も毎年増え続ける軍事費と、挙げればきりがないくらい中国は周辺国との軋轢を生じさせている。中国を覇権国ではないと断定する根拠はどこにあるのだろうか。

 黒田見解とは反対に、政府部内では防衛庁はあきらかに中国の軍事的台頭を警戒し、そうした認識は『防衛白書』にも明記されている。先ごろ日本と米国の防衛関係者と外交関係者が確認した「2プラス2」の場でも、台湾に対する中国の軍事攻撃にどう対処するのかが確認されたばかりである。

私が黒田総裁に対して感じる危うさと違和感は、米国に対する日本外交の自立性の裏返しとして、安易に中国や北朝鮮との接近をはかる点にある。こうした財務省の金融マフィア勢力の姿勢と日朝国交正常化を画策した外務省の田中均氏らのイメージする「東アジア共同体」構想は、アジアシフトを強める財界の意向とも重なり合い、新革新官僚の外交理念ともなりつつある。そればかりか反米親中傾向をもつ一部メディアや学者、文化人の賛同まで獲得しつつある。


> 2005年10月、実はADBのなかに東北北朝鮮開発援助を想定してあるセクションが誕生している。「地域経済統合室」という。

第4回6カ国協議が合意した直後、すでに財務省が主導権を握っているアジア開発銀行では中国東北部・北朝鮮への援助を想定して担当機関が発足しているという日本政府・財務省の手回しのよさには恐れ入りますね。

表向き日中・日韓は靖国参拝を巡って冷え込んでいるとは言いますが(政冷経熱)、どうしてどうして中国が欲する大プロジェクト=東北三省・北朝鮮安定化という点について、日中両政府は、利害が一致しています。

ちなみに中国を動揺させたいと願うなら、歴史的に見ればこの東北三省(旧満州地域)をド突くことであることは、指摘するまでもありません。

靖国に目を奪われて、その影で親中の舵取りをしっかり取っている日本政府、小泉首相もお見逃しなく。
____________

この記事が参考になった方は、下記バナーをクリックしてください。

|

« よど号拉致事件を考える市民集会 藤沢速報 | トップページ | ぬくもりは裾野から伝わる~浦和署名活動 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/35960/1091659

この記事へのトラックバック一覧です: 青木直人著『拉致処分』のまとめ:

« よど号拉致事件を考える市民集会 藤沢速報 | トップページ | ぬくもりは裾野から伝わる~浦和署名活動 »