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2006年3月29日 (水)

杉嶋たかしさんの国会証言(1)

衆議院会議録情報 第154回国会 安全保障委員会 第9号

昨日紹介した杉嶋たかしさんの国会証言をすこしづつ紹介していきます。
平成14年の証言ですが、改めて見ておく必用があると思いますので、抜粋して掲載します。

第154回国会 安全保障委員会 第9号

平成十四年七月二十五日(木曜日)  午後一時三十分開議

○杉嶋参考人 
このたび、参考人として意見陳述する機会をお与えくださいまして、まことにありがとうございました。
 私がなぜ北朝鮮に拘留されたか、また、その経緯につきましては、月刊文芸春秋の五月号に私の手記として明らかにしましたので、それをごらんくださいまして、この席では割愛させていただきます。
 私は、拘留生活を送る二年二カ月の間、日本人としての誇り、人間としての誇り、自分自身としての誇りを精神的な核として厳しさに耐えて、そしてたった一人で北朝鮮全体と戦っているのだ、そういう自覚を持って身を律しておりました。
 しかし、抑留の全生活を通じて、日本国の政府による救出の動きがさっぱり伝わってこなかったどころか、北朝鮮の担当調査官や情報機関トップらに、おまえは日本国から見放されているぞと言われ続けていたために、私は、邦人救出の義務を外務省や政府は怠っているのではないかという不信感に強く駆られまして、解放の日に家族とともに外務省の官吏の方が北京に出迎えに来られたときに、正直、ぶん殴ってやろうとさえ思ったほどです。

 ところが、私の家内によりますと、水面下で大変な御尽力をしてくださっていたということを私は知りまして、誤解が解かれまして、大変感謝している次第であります。
 ただ、気になりましたのは、日本へのトランジットで、北京空港で、日本に帰る間待合室で、出迎えの佐藤審議官、佐藤重和審議官ですが、私が帰国するに当たって、北朝鮮から謝罪を求めると同時に身の代金も要求されたのではありませんかと尋ねましたところ、はい、そういうことがありましたと言われましたので、それではどのぐらいでしょうか、一億円ぐらいですかと聞いたら、いや、そんな多くはないよと言いましたので、一転して私は、二千万円ぐらいではありませんかとお聞きしました。まあそのぐらいでしょうということでしたので、まだ払っていませんか、もう払いましたかと聞きましたら、まだ払っていませんということだったので、いや、それは払う必要はございませんよ、特にこれは私自身の問題でもありますから、もし一けた下がって二百万円ぐらいであれば、私が分割払いでも自分のお金として払いますと申し上げました。その後、二千万円程度、すなわち二十万ドル程度ですか、それが本当に政府、外務省が北朝鮮に払ったのかどうかは私は知りません。
 しかし、私が佐藤審議官に払わなくてもいいと申し上げたのは、私が抑留生活中に、私の身柄の扱いが、北朝鮮側がどうも政府間取引の対象に転化したのではないかと考えまして、これでは困るなと思いまして、北朝鮮の担当官に、日本国政府に私の件で謝罪を求めるときにそれは文書の上だけでしょうねとお聞きしました。すると、そのとおりだと言って金銭絡みを否定しましたので、私は佐藤審議官に、払う必要はない、こう申し上げた次第です。
 しかしながら、実際には、私の危惧したとおり、身の代金を要求してきたわけです。ですから、彼らの立場からいうと、保釈金の位置づけかもしれません。しかし、身の代金は身の代金ですから、私は、このように他国の人間を二年二カ月にわたって拘束し、抑留をし、そして釈放するに当たって身の代金を要求するというのは、とても民主主義国家のやることではない、民主主義を標榜している国ではないということを感じております。
 私が見た北朝鮮の内外政策というのは、パルチザン的発想と手法で貫かれておりまして、主観の論理、そして力の論理しかない国です。このような国は、相手が自分より強くて、団結して真剣に挑んでくると譲歩する可能性がありますけれども、とても尋常な話し合いでは応じるとは思えません。
 ですから、我々は、拉致問題にしても、他人事のように考えず、国民一人一人が自分自身の問題としてとらえて、打って一丸となって政府を支援し、また、政府はそれを受けて、小細工などせず、正々堂々と毅然として対北朝鮮政策をとってほしいと思っております。
 私は、社会主義が計画経済を遂行する上で必要とする強大な国家権力が必ず体制下の国民生活を圧迫するとの確信を持っておりましたので、六〇年安保の世代でありながら、当時、マルクス経済学者たちが、社会主義へ移行するのは人類にとって歴史的必然であると学生や社会を扇動していたことにも、本能的なおそれと疑問を抱き続けておりました。
 日本経済新聞に入社後も、なぜ全世界が社会主義化しないのか、それどころか社会主義諸国の経済発展がなぜおくれているのかをみずから検証するために、旧ソ連、旧東ドイツ、中国、ベトナムなど社会主義国めぐりをし、この延長線上に北朝鮮があったわけであります。
 私は、一九八六年の第一回の訪朝の後、同じ日本経済新聞社に勤めている同僚記者に、内閣情報調査室と公安調査庁関東公安調査局に連れていかれまして、その当局から日本の安全のために協力してほしいと懇請され、ささやかな愛国心から協力を約束しました。
 内調で私を担当したのは、当時一課課長代理で防衛大学一期生の内山實人氏と調査官の小島勝成氏でした。一方、公安庁は、担当官が何人もかわりましたけれども、私が拘束される寸前の担当官は黒岩和英氏と小林又三氏でありました。正直申し上げて、私は、この人たちに協力することこそが、愛する祖国日本の平和と安全を守り、祖国への忠誠心を示すことだと考えて協力に励みましたが、結局彼らに裏切られた思いです。
 といいますのも、この人たちは、特に公安庁に手渡した写真やビデオ、供述資料、これがことごとく北朝鮮情報当局に渡ってしまっていることが取り調べの初期の段階で露呈され、慄然としました。これはもう機密が漏れているというより、敵国側に情報提供するシステムができ上がっているとしか言いようがありません。情報を保管している部屋に出入りできるすべての職員が疑わしいとさえ言うことができます。私は、第三者機関によって徹底した調査が行われるとともに、利敵行為を働いた者には厳罰に処する法律を早急に整備してほしいと思っております。
 情報戦争激化の今日、収集と同時に情報の管理もまた重要さを増しております。日本国及び日本国民に対する忠誠心に満ちた、真の意味で国益とは何かのわかった質の高い職員で情報機関を再構築するべきではないかと考えております。私が北朝鮮に拘留中、情報機関のトップの秘書は、私に、日本の公安はざるのようなものだ、内調もよく似ているけれども、少しガードがかたい程度である、日本全体は、防諜関係からいったら全く丸裸同然であると言われました。何たる屈辱かと思いながら、私はじっとこらえて聞いておりました。
 私の身柄引き取り交渉に進展が見えず、日本国政府の態度に業を煮やした焦りからか、二〇〇〇年六月二十一日にピョンヤンで記者会見を開き、日本国政府に圧力をかけるという計画がございました。そのとき、私の担当調査官は、日本の有力メディアが、とにかく一発記者会見をピョンヤンで開いてくれれば、我々はそれを受けて日本の政府に働きかけるということになっていると言いました。私はびっくりしまして、私の帰国運動に名をかりた身の代金要求交渉を進めようとしている北朝鮮のお先棒を担いでいる日本の有力メディアはどこかと考えました。帰国後、そうした北朝鮮側の情報操作の受け皿が何とTBSだったことを、家内へのTBS外信部長岡元隆治氏の手紙で判明しました。
 二〇〇〇年六月二十一日夜、私がまだ北朝鮮で裁判も受けてなく、したがって有罪判決も下っていないのに有罪判決だと報道し、驚いた家内がTBSに問い合わせた手紙を出したのでした。TBSは、とんでもない誤報をして我が家庭を苦しめたばかりでなく、図らずも北朝鮮の情報操作に踊らされたことを暴露する結果になりました。同じ日の午前十時に予定されていたピョンヤン・人民文化宮殿での私の記者会見が急遽取りやめになったのは、恐らくTBSが私の身柄についての報道をするということで北朝鮮側と話がついたということを、今にして合点がいく次第であります。
 ですから、今後日本のマスメディアは、北朝鮮とのパイプづくりには、決して独占情報欲しさに北朝鮮側の言いなりになって大金を使った上に利用されないよう十分注意し、軸足はあくまで日本に置き、日本の国益を守り抜くように心してほしいと思います。
 最後に、国家機関が善意の国民に協力を求め、それによって生じた国民の受難に対しては、何らかの公的な謝罪や補償があってしかるべきではないかと思います。特に公安庁のように、頼むときは頼んで、その国民が受難に陥ったとき、知らぬ存ぜぬのトカゲのしっぽ切りのような扱いでは、だれもそのような政府機関を信用して安心して協力しなくなります。これは有事法制以前の問題です。
 日本が有機的統一体として機能し、かけがえのない祖国の平和と安全を守り、新しい時代の国民的連帯感を醸成するためにも、政府と国民が信頼関係を築く道筋を政府は率先して示すべきではないでしょうか。
 御清聴ありがとうございました。

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