米大統領・横田さん面会の意義
「救う会」副会長・福井県立大教授 島田洋一氏に聞く
ブッシュ米大統領と横田早紀江さんの面会実現は、今後、拉致問題の行方にどのような影響を与えるのか。今回、横田さんとともに米下院公聴会で証言した拉致被害者家族支援団体「救う会」副会長の島田洋一福井県立大学教授に聞いた。
(聞き手=ワシントン・早川俊行)
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しまだ・よういち 1957年生まれ。京都大学法学部卒業。同大学大学院法学研究科博士課程修了。福井県立大学助教授を経て、2003年から同教授。著書に『アメリカ・北朝鮮抗争史』など。
――ブッシュ大統領が横田早紀江さんと面会した意味は何か。
ブッシュ政権が人権問題への取り組みを強めていくというメッセージだろう。具体的にどういう動きに発展するかは分からないが、一つはっきり言えることがある。ブッシュ大統領は早紀江さんとお互いにクリスチャンであるという話をし、三回以上も握手をしたそうだ。この事実を受け、米政府は今後、人権問題で明確な進展が見られなければ、核合意が進行しても北朝鮮に経済援助をすることはないだろう。そんなことをすれば、ブッシュ大統領が早紀江さんを裏切ったという話になるからだ。
また、ブッシュ大統領は「一国のリーダーが子供の拉致を奨励することなど想像できない」と語った。米国の大統領が、金正日個人が拉致を指令したとの認識を示したことは重要だ。
――今回の面会は、米国の北朝鮮政策に影響を与えるということか。
まさにそうだ。面会の場には、六カ国協議の担当者であるヒル国務次官補やレフコウィッツ北朝鮮人権問題担当特使らも同席した。これは、大統領が北朝鮮政策の方針を示すために彼らを呼んだわけだ。つまり、今回の面会は、政府内に向けた大統領のメッセージでもある。その意味で、非常に大きな成果だったと思う。
――横田さん以外に、北朝鮮を脱出して韓国に亡命したキム・ハンミちゃん親子も招かれた。
ハンミちゃん一家を北朝鮮に送り返そうとした中国に対する警告であることは明白だ。また、韓国政府がつぶそうとしている北朝鮮向けラジオ局の金聖民代表も招かれたが、これは盧武鉉政権に対する警告だ。戦略的判断に基づく人選であり、北朝鮮、中国、韓国に対して同時に圧力を強めていく方向が示されている。
――拉致問題を七月のサンクトペテルブルク・サミット(主要国首脳会議)で取り上げるべきとの意見が出ているが。
サミットで取り上げることが大切ではないとはいわないが、それよりも情報収集のほうが重要だ。「救う会」のような小さな組織が調査しただけでも、日本人以外に拉致されたケースが確定している。米国が一九七七、七八年ごろに若者が行方不明になったケースを徹底的に洗い直せば、必ず新たな拉致事例が出てくるはずだ。米国にも拉致被害者がいたことが判明すれば、米政府も本格的に対応せざるを得ない。米議会を中心にその情報収集キャンペーンをやってもらいたい。
曽我ひとみさんの夫チャールズ・ジェンキンスさんら脱走米兵四人は皆、拉致被害者と結婚している。ジェンキンスさんは、外国人同士を結婚させて、西欧風の顔をした子供を産ませ、彼らを在外米軍基地を狙う工作員として使おうとしていたと証言している。こうした工作員をたくさん養成するために、米国人を拉致してこいという話が出ていたとしても不思議ではない。これは米軍の安全に関係する問題であり、決して日本と北朝鮮のバイラテラルな(=二国間の)問題ではない。
なぜ七七、七八年かといえば、金正日が拉致の指令を出したのが七六年半ばといわれているからだ。当時の米国は、世界から甘く見られていたカーター政権であり、海外を旅行していた若者などが被害に遭っていたとしてもおかしくない。
こうした新たな情報が出てくることが国際的な運動につながっていく。
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コメント
こんばんは、spiralです。
貴ブログへTBさせて貰おうと思ったのですが、うまくいかないので、コメント欄へアドレスを貼らせて貰います。どうもすいません。
http://hepoko.blog23.fc2.com/blog-entry-172.html
投稿: spiral | 2006年5月 4日 (木) 01時35分