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2006年6月25日 (日)

■飛ばせなくなったテポドン(佐藤勝巳)

■飛ばせなくなったテポドン

          佐藤救う会会長


 金正日はテポドンを飛ばすつもりだった。飛ばしたかったが飛ばせなくなった。

 今、8割くらい飛ばさない方向ではないか。

 なぜ発射したかったのか。北朝鮮が完全に行き詰まって、発射によりアメリカと二国間交渉に持ち込み、局面を打開したかった。

 なぜ行き詰ったのか。アメリカの金融制裁の効果だ。世界の銀行が、マカオのバンコ・デルタ・アジアと同じ措置をとられると困るので、北朝鮮の口座開設に応じなくなった。困った北朝鮮がロシアと現金決済で取引をしたところ、1割がドルの偽札だった。以後、現金決済もできなくなった。

 4月に、6者協議の各国首席代表が東京に集まった時、北朝鮮の金桂冠外務次官は、帰国会見で、「核開発を止めたかったらアメリカは金融制裁を解除せよ」、「解除すれば6者協議に出る」と居直ったが、これは悲鳴だ。アメリカがEUに北朝鮮の犯罪情報を提供し、EUは摘発を続けている。

 日本は現行法の厳格な適用と言いつつ、在日本朝鮮人科学技術協会(科協)を捜索し、そこで得た資料から摘発を続けている。例えばパチンコ屋の脱税容疑での摘発がかなり行われており、総連にいてはビジネスを続けられないとの不安が広がっている。また、RCC(債権回収機構)は旧朝鮮信用組合(朝銀)から総連が借りていた628億円を取立て中で、払わないと担保になっている総連の不動産が競売されることになる。

 北朝鮮は、次の総裁選で、安倍総理が一番困るとのことだ。つまり、制裁が効いているということの証明だ。テポドンの部品は日本製がかなりあるだという。
大量破壊兵器の部品もそうだ。制裁は効果がある。金正日の料理人だった藤本氏は、近著で、金正日のほしいものを万景峰が買ってくると述べている。万景峰を止めて困るのは金正日だ。

 安倍官房長官は、5月28日の国民大集会へのメッセージで、「対話と圧力」とは言わず「圧力と対話」と述べた。圧力をかけてから交渉するのは当然だ。
こういう日米の圧力で金正日政権が追い詰められたことが発射理由の一つだ。

 また、韓国の統一地方選挙で与党が惨敗したことにより、金正日政権が追い詰められた。何か手を打たないと、と危機感を持っている。2000年6月15日、金大中が平壌に行き、北朝鮮の連邦制案は韓国の案と共通性が高いと評価した。
「現代コリア」はそれが危ないということを言い続けてきている。北朝鮮、韓国の専門家も「現代コリア」を読んでいるので知っている筈だ。

 ところが、金大中は、テポドンを理由に訪朝を取りやめたと言っているが、それは違う。訪朝もテポドン発射も前から決まっていたことだ。理由は別にある。

 まず、北朝鮮にとって金大中は利用価値がなくなったということだ。民団と総連が5月17日に和解声明を出した。テロ国家の出先機関と和解するとは民団は気でも狂ったのか。私は「現代コリア」に、「本気なら民団は敵だ」と書いた。
ところが、民団にもしっかりした人たちがいて、6月15日、8月15日の共同行動は中止になった。明日の中央委員会でこの声明が否定されれば、現執行部は総退陣になろう。

 なぜこういうことが起こったのか。72年、南北共同声明直後、民団に郭東儀をトップとする左派グループが浮上した。我々は、ベトコン派と呼んでいたが、この時民団乗っ取りに失敗した人々が現在まで粘り強く運動し、今年になって乗っ取りに成功した。当時排除された韓民統が韓統連と名を変えて運動していたが、その幹部も民団の幹部になった。

 北朝鮮は20年単位で工作を行う。その結果生まれた民団内左派の狙いは、連邦制の雛形を日本でまず作ることだ。そして金大中が訪朝し、南北で連邦制を作ろうと言うことだった。

 もう一つは、金大中のスキャンダルが最近判明したことだ。金大中は米国のニューヨーク州に400億円の土地を持っているという。韓国の保守派がアメリカで告訴し、ソウルでも告訴した。韓国メディアはまだ報道していないが、口コミで北朝鮮も知っている。韓国や日本にも金大中ファンドがあるかもしれない。こういうことでは将軍様が傷つく。金大中は金正日に見捨てられたのであって、テポドンではない。悪魔と詐欺師が合体して生き延びようとしているのだ。

 李鍾●統一部長官は、ミサイル発射なら食糧、肥料の支援はできないと言ったが、本心ではない。そう言わざるをえない状況が生まれたということだ。大胆な予測をすると、金大中はこれで政治生命を絶たれた。地元の全羅道でもいっしょに心中するのはいやという政治勢力が出てきた。

 テポドン発射にどこが一番反対したか。それは北京だ。今回、北京が強い圧力をかけている。北朝鮮はアメリカとの二国間交渉が狙いだが、中国は6者協議を仕切ってきた。ミサイル発射は、もう中国はいらないということだ。これで、中国の北朝鮮への影響力もゼロになる。しかし、そういう事態は、中国としては絶対に認められない。中国は北朝鮮を植民地くらいにしか思っていない。大国意識が強い。にもかかわらず、ミサイル発射など、後ろ足で砂をかけるような行為だ。

 安倍官房長官は、在京の各国大使にサミットで拉致問題を取り上げるよう要請した。中国は公使だったが、この公使が別の所で、「拉致問題解決に協力する」と発言している。これを北朝鮮が持ち出して中国に抗議したらしい。また、「自国で作った武器を発射して何が悪いか」と居直ったという。中国は、「やれるものならやってみろ」と圧力をかけた。結局、発射していない。中国からすれば、重油を止めればいい。中国が何か圧力をかければ北朝鮮は発射できないだろう。

 アメリカはイージス艦5隻を浮かべている。1隻に巡航ミサイル200発なので計1000発撃てる。また、南西太平洋に4席の空母を出して軍事訓練をしている。1隻に75機の航空機を積んでおり、計300機がいつでも飛べる状態だ。
空母1隻には5000人が乗っており、他に護衛艦、駆逐艦が5隻、潜水艦が2隻で船団を組んでおり、これが4つある。すごい軍事的圧力だ。日本人は意識していないが、これらで日本人の安全が確保されているということだ。

 金正日が発射できないと、一度はゴーサインを出しただけに軍との信頼関係が大きくゆらぐ。韓国、北朝鮮が自らアジア情勢を作れなければ、内部矛盾が高まる。南北政権ともに、そういう厳しい状況におかれていると思われる。
●=夾の人が百


平成18年6月22日 東京集会にて

救う会ニュースより

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