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2006年6月17日 (土)

北朝鮮人権法について

北朝鮮人権法に関する資料

◆6月17日付・読売社説(1)
 読売新聞社説

[『北』人権法]「拉致を許さない決意を明示した」

 国家犯罪である拉致を許さない、という日本の国論、世論に揺るぎがないことを北朝鮮に明確に示したのではないか。

 いわゆる北朝鮮人権法が成立した。政府が拉致被害者の帰国実現に最大限努力すること、事態に改善がない場合、政府が経済制裁措置を取ることなどを明記している。制裁条項は、国内での制裁発動の法的根拠となる。

 「北」人権法は与党と民主党がそれぞれ法案を提出していた。会期末目前で修正合意し、成立にこぎつけた。

 合意が出来ず、法案の成立が先送りされていたら、北朝鮮に、日本国内は一枚岩ではなく、付け入るスキがあると、誤解させる恐れがあった。

 小沢民主党は対決路線を打ち出している。だが、さすがに、「北」人権法で“対決”して、北朝鮮を利することは出来ないと判断したのだろう。

 修正合意によって、法律の内容も強化された。与党案には、脱北者の支援に関する規定はなかった。民主党案には、制裁措置の条項はなかった。成立した法律には、これらすべてが盛り込まれた。

 もちろん、「北」人権法が出来たからといって、直ちに実効があがるわけではない。拉致問題を解決するためには、やはり北朝鮮に対する国際的な包囲網を強化しなければならない。

 日本が単独で制裁を発動しても、効果には限界がある。「北」人権法が、国際的な連携強化を求め、政府の制裁発動に当たって、拉致問題に対する「国際的動向を総合的に勘案する」としているのも、そのためだ。

 日本は7月の主要国首脳会議(サミット)で拉致問題を議題として取り上げるよう参加各国に求めている。6月末の日米首脳会談では、改めて拉致問題での協力を確認する見通しだ。

 北朝鮮が先の外務省談話で、「拉致問題の国際化の策動」で「日朝関係を史上最悪の局面に追い込んでいる」と非難したのも、こうした動きを警戒しているからだろう。

 北朝鮮は、横田めぐみさんの夫とされる韓国人の拉致被害者・金英男さんに、母親の崔桂月さんが面会することを認めた。韓国世論を軟化させ、日韓分断を図る狙いがうかがえる。

 韓国の盧武鉉政権は、拉致問題の解決に積極的ではない。北朝鮮を刺激し、北朝鮮に対する融和政策の障害になることを避けたいからだ。

 だが、日韓の協力は、国際連携の中で最も重要な部分だ。北朝鮮の策謀に乗ることのないよう、日韓の連携強化を粘り強く働きかけていく必要がある。

(2006年6月17日1時32分  読売新聞)


西日本新聞/社説

[国際連携強め有効運用を 北朝鮮人権法]
 今国会で成立した北朝鮮人権法は、拉致問題で「誠意ある対応」を示さない北朝鮮に解決を迫る日本としての明確な意思表示と言えよう。

 日本単独での送金停止や輸出入規制を可能にした改正外為法、北朝鮮の船舶を想定した特定船舶入港禁止特別措置法に次ぐ、新たな「圧力カード」になる。

 与党と民主党による議員立法だ。それぞれ提出していた法案を一本化した。

 背景には昨年末の国連総会で「拉致非難決議」が採択され、横田めぐみさんの両親による訪米、訪韓で拉致問題に対する国際的な関心の高まりがある。

 7月の主要国首脳会議(サミット)でも拉致を議題にするよう働きかけを強め、アピールする意味合いもあろう。

 人権法は(1)拉致問題などで北朝鮮の姿勢があらたまらない場合、改正外為法などによる送金停止などの経済制裁措置発動(2)脱北者の保護や、脱北者を支援する民間団体への財政支援―などが柱だ。

 注目されるのは脱北者支援である。

 拉致被害者蓮池薫さんらの帰国後の証言が警察当局による元工作員辛光洙(シングァンス)容疑者らの国際手配につながり、「拉致問題は解決済み」という北朝鮮の主張を突き崩す根拠となった。

 脱北者に関しても、政府が聞き取り調査を行い、北朝鮮国内の日本人拉致被害者に関する情報収集も期待できよう。

 ただ脱北者支援には、その対象範囲や手法など慎重な判断が必要だろう。

 与党は帰還事業で帰国した朝鮮半島出身者、日本人妻などを想定している。

 しかし、なし崩し的に対象を拡大して脱北行為に深く関与することがあれば、北朝鮮側は「体制崩壊を狙った主権侵害」と受け止めて態度を硬化させ、進展は遠ざかりかねない。

 肝要なのは、北朝鮮に対して毅然(きぜん)とした姿勢を示すとともに国際連携を強化する中で、いかに北朝鮮人権法を有効に機能させるかである。

 韓国の盧武鉉(ノムヒョン)政権が標榜(ひょうぼう)する対北融和政策推進に伴い南北接近は加速し、今月末に金大中前大統領が訪朝の予定だ。

 韓国はその阻害要因ともなる拉致問題には冷淡だ。北朝鮮もめぐみさんの夫とされる韓国人拉致被害者と家族を再会させ、日韓連携に揺さぶりをかけている。

 一方、日本が経済制裁を発動するにしても実効性が伴わなければなるまい。

 この3年間で北朝鮮と日本との貿易額は半減したが、逆に友好国の中国や、韓国との貿易額は急増している。

 日本としては米国だけでなく中韓両国とも共同歩調が取れるよう独自戦略を持ち、外交努力を重ねることが不可欠だ。

 日本の対北政策は「対話」と「圧力」が基本方針だが、「圧力」はあくまでも「対話」を引き出す外交手段である。

 人権法の規定で制裁発動の判断など裁量を委ねられた政府も慎重、適切な判断を迫られる。責任は一段と重くなった。

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