石高健次さん講演-(4)
それと政治家の無責任。
拉致問題に手を染めても票にならないと。利権に結びつかないですよね。北朝鮮と国交樹立すれば、利権に結びつく場合もあるでしょうけど。
そういうものに対して、政治家というのは、本当に動かなかったのです。
そういう意味では、拉致が出たときは、橋本龍太郎総理ですね。小渕さん森喜朗さんが後に続いた。
結局誰も、北朝鮮に認めさせるということが出来なくて。小泉さんのことも、色々批判もありますが、拉致の入口をこじ開けたという点では、やっぱりよくやったと僕は思います。
やり方が、もっと全体と関連させて、何故出来なかったんだろうかと口惜しいこともありますが。
そういう長いこと、政治家も動かない、官僚もやらなかった中で、北朝鮮にいる被害者はもちろんですが、家族の方も、本当に辛い思いをなさってきていて、横田さんであれ有本さんであれ、今現在も、我が子が生きているか死んでるのかわからない辛い毎日を送っておられる。
これの辛さは、もう、いなくなった日と、同じ気持ちなんですよね、めぐみちゃんでもう30年なりますけれども。有本さんで24年ですか・・・。
連絡が来なくなった、突然消えた、そういう心が引き裂かれるような痛みを、20年、30年ずっと持ち続けておられるのが、被害者家族の方たちなんです。
これはもう、ほんとうに、早紀江さんが最近、記者会見で『こんな状態で、普通の親であれば、半狂乱になりますよ』とおっしゃっていましたが、本当に辛い、生殺しの状態が続いている。
それとまぁ、最後の方になりましたが、なんていうんですかね、最近の安倍さんに対する期待は、すごく大きいですし、安倍さん自身、一生懸命何とかしようという気持ちでやってらっしゃるのは、ありがたい。
ただ、最近ちょっと、えー?っと思うことがありました。
拉致の家族の方達と一緒に頑張ってくれとやるのは良いんですけど、この前、めぐみちゃんが帰ってきて欲しいということで、有名な歌手、PPMのポールストゥーキーさん、私も10代で彼が大阪に公演にきたときに見に行ったことがあるんですけど。彼が歌を作って、それを官邸で、安倍さんとかが一緒に聴かれた。
僕はそれを聞いて、非常に複雑な気持ちになった。そういうことやっている場合ですかと。
家族の人たちは、僕らもしょっちゅう会食したり私自身も有志を集めて、元気づけとカンパ集めのためにチャリティーコンサートをやったりします。外国からも、有名な音楽家が協力してくれて最後に皆で『ふるさと』を歌ったりしますけれど、総理大臣が、官邸で、一緒になって、コンサート聴いていて良いものかと。
もっとやることあるだろうと。ちょっと、なんか、「えっ?」とおもいましたね。
それと昨日のお昼、共同通信が流したんですけど、政府が1億500万円の広告費を出して、政府は拉致問題解決のために頑張りますと、そういうキャンペーン、公報をテレビを使ってコマーシャル流すという。1億500万ですよ。
「え?どうなってるんや」と。
現にこうやって皆さん今日も熱心に聞いていただいて、テレビや新聞で、拉致はとんでもないことであり、国はなんとかせにゃいかん、政府がなんとかせにゃいかんと、国民はわかってるわけですよね。
わかっているのに、なんでそんな、わからせるための広告が必要なのか?
1億円があれば、いろんな情報、拉致解決につながる情報を集めて欲しい。どれだけの人間がやられているのか?あるいは、今、中朝の国境地帯で警備がゆるんでいるうえ、国内も身分証で自由に移動できるくらいになっていますから、被害者を脱北させて救出させられるかもしれない。そのために1億500万円を使う。
それなら、私はわかります。
でも、政府がここまで頑張ってやっています、拉致について我々は絶対に諦めない、やりますからというメッセージのコマーシャルを流す。これ、一億500万。これ、みなさん、どう思いますか?一億500万、僕は、ちょっと違うんじゃないかと思います。
そんなことを思っていて、ふと昔の、ある光景を思い出しました。
97年、横田さんのことが出て、2月7日に、横田さん夫妻が、院内、つまり国会の中の、新進党、衆参両院議員総会に行かれて、訴えられたんですね。『自分たちは、一民間人なんだと。国交もない国に行って、探したり連れてくることはできないので、政治家の皆さんの力をお借りするしかありません』と頭を下げて、頼まれた。
と、そのときに、議員席から女性のちょっと高い声で、『がんばってねーーー』と言う声が聞こえたんです。横田さんに対してですよ。
これ、政治家ですよ。このことを今思いだした。何と無責任なんだ。
頑張るのは、あんたたちだろう。横田さんは、心配で家でずっと耐えてきた。『もう、あとは私たち政治家がやりますから、じっと体を休めてください』というのが筋じゃないか。
頑張るのは、君たち政治家だろうと。
そのとき、本当に何とも言えない怒りみたいなものを覚えたんですね。
そのことを、なんか、最近思い出しました。
それと、最後にこういう拉致が、何故、未だに、表に出てから10年たっても解決できないのかということを考えたときに、私が思うのは、日本という国には、やっぱり、なんていうか、牙がないんですね。
牙というのは、例えば人は、何か理不尽なことをされたときに、何をするのか!と。言葉だけでだめだったら、ときには殴ったりするでしょう。
国と国では、話し合いだけなく軍隊を派遣するぞという。そういうことが、日本の場合、歴史の流れに於いて、悲しいかな、ある意味と必然的にそうなったと私は思うんですが、牙をむけない国になっている。
アメリカだったら、イランのアメリカ大使館に、職員等が監禁されて、ヘリコプターが救出に行って、
これは、砂嵐で失敗しましたが、最終的には、取り返した。
たとえば、拉致があったら、アメリカなら、空母を東シナ海の北朝鮮沖に浮かべて、話し合いでまず解決しようとするでしょう。被害者を出さなければ、攻撃すると。その前には、経済制裁、勿論どんどんどんどんやっているでしょうけど。
そういう意味での、牙と言いますか、爪というか、そういうものが、やっぱり日本にはない。
やっぱり、アジアを植民地支配した後に戦争に負けて、戦後は平和憲法というのが出来て、結局、なんか言うだけで、靖国神社うんぬんと言うだけで、周りの国は、ワーッと言う。それに対して、胸を張って、日本のやる安全保障の道といいますか、そういうことを堂々と言い返せないできた。安倍さんになって少し変わりつつあるようですが。
結局、なんですかね、その、言われっぱなし、やられっぱなし、足下をみられている。北朝鮮なんか、いくらなめてかかっても、日本は攻めてこないと、わかっているんでしょうね。アメリカはそうじゃない。その違いが、拉致というものの解決を阻んでいる構造だと思います。
で、それはどこから来たかと言いますと、繰り返しますが、植民地支配をした結果、連合国軍に負けて、そのあと、正に武装解除をされて、牙を抜かれて、そして平和憲法といわれる憲法ができて・・・。一方で、アメリカが護ってくれているのを尻目に経済発展をしてきた。ふっとみたら、国防とかそういうことは、全然自分たちの力でやってこなかったんです。
これは、我々マスコミも自戒を込めて、自分たちもやっぱり力がなかったと反省しておりますけど、国防論議ということすら、日本のメディアというのは、長年タブー視してきた。
国家安全保障、国防というのは、正に拉致被害者とか名もない何の罪もない一人一人の国民を守るということなんですよ。
これはみなさんどんな人でも、家族を護りたいとか故郷の同級生、友達を護りたい。いなくなったら、何とかしなければいけない。そういうことの集合なんですね、国家安全保障というのは。そういうことの集合だと思います。そのために何をしたらいいのか、真正面から、やっぱり、考えていかなければいけない。
戦後、おざなりにしてきたメディアの責任も大きいです。
そういうことが、今拉致が、全然出口がみえてこない背景にあると思います。
拉致解決について、アメリカに頼るというのも、考えてみれば、情けないことなんですよね。横田さんが、副大統領にあったり、ブッシュにあったり、アメリカの政治家にあって頼むというのは、追い詰められてそうせざるを得ないんですけど、それを第三の独立国家が見たら、やっぱり、心の底では、「日本という国は、自分の国民が奪われて、なんで被害者までがアメリカに頭を下げなければならないのか・・」と。それ自体で、またなめられるという気がします。
ですから、イラクへの派兵で自衛隊はサマワに行きましたけれど、考えてみたら、それより、二十年ぐらい前ですかね、カンボジアのアンタック、PKOとかで派遣するときに海外派兵は憲法違反だとかものすごかった。それが、だんだん、国民的な合意も出来てきて、イラクに軽いにせよ軍隊の装備を持って出て行った。
これは、北朝鮮からすれば、牙のない自衛隊がよく出て行ったものだ、と少しはプレッシャーになったのではないかと思います。
だんだん、まともに安全保障を見つめていこうという意識は高くなってきているんだけれど、同時並行で、国民の、国や自分の家族を護る意識みたいな、そういう個人個人の内面からの意識も沸き起こってこないとだめです。
いくら物だけ、兵器や道具、ミサイルだけ、そろったって…。
今日はこういう話の機会を与えていただいて、本当にありがたいと思っています。それは、みなさんが、やっぱり、正に、めぐみちゃんとか、田口さんとか、有本さんとか、そういう人がどうなってるんだ、どうしたら解決するんだという意識で来られているからです。
正にそういう意識があることが国を護っていく、そういうことを繰り返させない、あるいは、解決する。そういう流れになっていくと思いますので、これからも、ずっと関心を持ち続けてやって欲しいと思います。
今日はどうもありがとうございました。
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