加藤博さん講演-藤沢にて
さる3月31日、藤沢で行われた、救う会神奈川主催による集会から、北朝鮮難民救援基金の加藤博さんの講演をご紹介します。 尚、この記録取材、掲載に関しては、救う会神奈川より承諾書を頂いております。救う会神奈川の皆さん、ご理解をありがとうございました。
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加藤博さん(北朝鮮難民救援基金)講演
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ご紹介いただきました、北朝鮮難民救援基金の加藤でございます。(拍手)
最初に、貴重な場面を提供していただきました、救う会神奈川に厚くお礼申し上げます。
今日はですね普段と違って私は少々辛口な話をするかと思います。
みなさんも、もう、既にご存じの取りね、拉致問題を巡る状況というのは、非常に容易ならざる状況だというふうに思います。
それは、先日の六者協議の中身をみてもわかるとおり、アメリカが大きく変身をしました。
これは、身が変わるという意味でもありますし、その気持ちが変わったという意味でもあります。この辺の事情については、私よりはるかに詳しい方が、たくさんいらっしゃると思いますので、詳しくは申し上げませんが、実際にはそのようになっていると思いますが。
その典型的な例は、バンコ・デル・アジア=偽札のマネーロンダリングをした張本人、ここと取引をした。
ここの不法資金の凍結を解除した。これは、北朝鮮に摂っては非常に大きな、プラスですね。
逆に言えばそれがあるために、北朝鮮は息の根を止められそうになっていた。
そう言うことがあるにもかかわらず、アメリカは、直接六者協議のテーマである核問題とは関係のない、不正資金の問題と取引をしたということですね。
これは、全体的に今北朝鮮の核問題や、その他の人権問題を解決するための大きな制裁決議が、世界的な規模で進んでいる制裁決議が、大きくほころんできたということだと思います。
ほころんだと言うことは、これは、昨年の12月の国連総会で、北朝鮮に対する人権非難決議案が通りました。これは世界が合意して北朝鮮に対する制裁が、始まったという意味でした。
しかしこれが、アメリカが六者協議の中で変身をしたことによって、これは、非常に、有名無実になりかねない。そういう方向に、大きく流れていると、言うふうに理解すべきだろうと思います。
しかし、日本が、独自で経済制裁をするということは、日本国としての立場、日本国民としての立場を明確に北朝鮮に知らせるという意味では有効なことでありますけれども、実際にこれが解決の糸口になっていくというのは、大変難しい状況になってきている。
つまり、日本が、このままの状態で行けば、孤立化していく。
拉致問題は、日本の問題というかたちになってですね、これは六者協議のもとでの、二国間の問題と言うような位置づけで、先日ハノイでやられたようなかたちに、どんどんと、この問題が、二国間の問題になっていく。
アメリカは核問題をやる、日本は拉致問題をやる、そして韓国は、南北の共同の民族同士というスローガンのもとに、経済支援をしていく。各国がもうばらばらによそを向いているんですね。
そして中国は、ピースメーカーとしてですね、一番言い役回りをしている。
平和主義者の顔を世界に振りまいていく。そんなかたちに
ですから、今のままの状況では、日本からの発進力というのは、相対的に低下せざるを得ない。
ますます弱くなっていくんではないかと言うふうに思います。
こういう状態では、全ての問題の根源である金正日体制の、独裁体制に由来するところの、拉致の問題、人権の問題、核の問題、すべてが解決するのは難しいだろう。
このような大きな流れを、どうして解決するのかというのが、私たちの目の前突きつけられた、そういう課題ではないかと。
つまり政治家は、変身したんですね。
自分たちの政治目的のために、人権も、拉致も、横にしてしまう、捨ててしまう。
このような状況は、いっぺんに起きるわけではありません。
私たちが、昨年の12月に、北朝鮮人権問題啓発週間、と言うのが行われました。
--日本版北朝鮮人権法が提出されて、その人権法に基づいて、北朝鮮人権週間というのが行われました。その中の国際会議の中で、いみじくも、今私が言ったような形を指摘しました。これは、私だけでなくて、そこに参加したアメリカからの代表も、日本の他の代表も、それから韓国からの代表も、そのように言ったわけですね。
ですから、それは1日にして変身するものではなくて、日々変わっていく。
結論はわかっているが、そのような結論を導き出したとしたら、国民の反応は、世界の反応は激しいものになります。ですから、徐々に徐々に変えていくという形になるけれども、最終的には、私たちが考えているような、『』人権の問題、それから拉致の問題、これが解決出来ない方向に持って行かれてしまうのではないかというふうに、非常に危惧しています。
そのためには、政府頼み、あるいは政治家頼みではだめで。私たち一人一人が、かくあるべきであるという、確固とした、やっぱり戦略目標というものを、それから、それを実行するための政治的手段を作っていかなければならない、そう言う段階にあるのではないかなと私は思っています。
私たちが拉致の問題で思うことは、これは、これは、私たちが、こういう集会をやって、日々状況を知ることは必要ですけれども、先ほども言いましたように、アメリカの国内、あるいは、ヨーロッパの方にも、拉致問題について提起はしています。
その多くの意見が、必ずしも、日本の国民の意識や意見とは一致してはいない。つまり日本の拉致問題は、北朝鮮と話をすればいいじゃないかと言う考えが、まだまだ強いですね。つまり、二国間の問題だと、そう言う考え方だと思います。
ですから、六者協議の中でも、二国間問題としてこの問題を解決するようにと。主要なテーマからはずしてしまう。そういうような形をどんどん進めていく。そう言う形が、今進められていることだろうと思います。
この拉致問題を、大きく私たちは今まで、前進させてきたと思います。
救う会も全国にできて、家族会も頑張って、そしてその主張を支持する多くの国民があって、ここまで来たと思うんですね。
しかし、この動きが今、はしごをはずされてしまうかもしれないという状況にあるのではないかと。
そのためには、私たちが、大きな戦略目標を持って、その手段を構築すべきだというふうに私は言いましたけれど、北朝鮮の独裁体制の問題から、この問題が起きているならばですね、これは、拉致問題だけでなく、北朝鮮における強制収容所の問題、それから、科学兵器の開発、核兵器の開発。全て関係があるんですね。
ですから、そういう問題として位置づけて、拉致問題もその中の一つであるというような、そういう包括的な問題として考えていく必要があるんじゃないかと、私は思います。
そして、今まで拉致問題の多くの情報が、これは日本政府がもたらしたものでもなくですね、これは、北朝鮮から逃げ出して、韓国にやってきた脱北者--北朝鮮の難民ですね、私たちは、『成功した難民』と言いますけれど--ようやっとの思いで韓国にやってきた、そういうひとたちのなかから得られた貴重な情報によってですね、拉致問題を今まで、ここまで前進させてきたんだと思います。
しかし、これは、言ってみれば、私たちがそう言う人たちの存在を知り得たから、そういう発展の道筋を見付けられたのであって、まだまだ、多くのそういう情報を提供できる人たちがいるに違いないんです。
私たちは、救う会がどれほど、そのことをやっているかはわかりませんけれども、私が言えることは、北朝鮮難民救援基金としては、北朝鮮から脱出してくる難民を助けて保護しています。こ数は年々増えています。昨年で、韓国に到着した人間は、一万人を越えました。日本に来た人間は、150人になります。これからも増えます。
今年の2月の末から、“北朝鮮難民の実態調査団”というのを、タイに私たちは、送りました。特定失踪者問題調査会、あるいは北朝鮮帰国者の命と人権を守る会、カナダの人権活動家、アメリカの人権活動家を入れて、調査しました。
そうしましたところですね、一昨年は、北朝鮮から脱出してきて、タイにたどり着き、タイが国外退去処分にした北朝鮮の難民というのは、900人です。そして、2005年が100とすれば、2006年は、300を越えています。そして今年、2007年の2月までで、もう120名を越えています。2月までで。このように急速に増えているんですね。
しかしこの中にどういう人たちが含まれているかということについて、つまり拉致問題や北朝鮮の独裁の状況について、もっと的確な、そして私たちが有効に利用すべき情報を持っている人がいるかもしれないんですが、その情報を得ることが出来ません。
その人達が今望んでいるのは、アメリカに行くこと、韓国に行くこと、日本に行くことですが、彼等がそれぞれの国に行ってからではですね、その国の統制があるために、その状況を的確に知ることが出来ないんです。
本当に拉致問題を解決するというのであればですね、難民問題も同時に解決するように、そのを脱出してきた人間から情報を的確に取るような体勢をとらなければいけないんですね。
これはまぁ、NGOだけでは無理なのかもしれませんが、だからといってこれを政府にやれと言っても、政府は出来ないんですね。これをやるのは、やはりNGOしかないんです。
ですから、難民から的確な情報を収集してこれを解決に役立てるような、そう言う組織を新たに展開させる必要があります。
それくらいの大胆な発想と大胆な行動力がなければ、今の情報を突き破って、新たに新たに新しい情報を入れてですね、世界の世論を変えていくだけの力にはならないんだろう思います。
我々はここで話を聞いているだけではダメで、実際にそういう何らかの活動、力に結びつく活動を展開しないと難しいと思います。
ですから、私の考えとしては、積極的難民の受け入れというのは、北朝鮮国内からの直接的情報を得る貴重な場でありますから、そのように色々な場所に、それぞれにふさわしい形で、そういう機関を作っていく。NGOが作っていくということがどうしても必要だと思います。
ですから、そういうアピールがあった場合は、皆さんの中から是非参加してもらいたい。
力のある人は、力を、お金のある人は、お金を、知恵のある人は知恵を出してもらいたいというふうに思います。そのためには、一つ一つの可能なかぎり実態調査団を派遣していく。
これは、私の個人的な発想の段階ですが、日本を主体としてですね、北朝鮮の人権問題、拉致問題も含めた人権問題をフォローするためのですね、そういうNGOを展開する、それをタイやラオスで展開するだけのですね、大きな動きを是非作っていきたいというふうに思っています。
積極的北朝鮮難民の受け入れは、効果的な反撃の材料になります。ぐらついている政治家の気持ちを正し、曲がった方法を正し、そして実際の問題を解決する力になりうると思います。
私はそのためには、いろいろなやるべき事はあると思いますが、それと同時にですね、北朝鮮の国内に直接メッセージを届ける方法を考えなければいけない。
まだまだ北朝鮮国内では外の状況がわかっていません。
日本から放送される“しおかぜ”は、妨害電波にやられます。これは、彼等が恐れているという証拠ではありますが、つまり効果的な影響力を及ぼすという点では、限界があります。勿論やらないよりはやったほうがいいし、やるべきだと思いますけれども。これだけで満足していてはダメですね。
直接北朝鮮の国民一人一人が、自分の目でみられるような自分の目で読めるようなものを手にする必要があります。そのような、直接メッセージを届ける方法について、北朝鮮の国民の中の良識=良質な部分に対して、このメッセージが届くような、そう言う工夫もしなければならない。
そう言う問題を抜きにして、いくら私たちが遠くからですね、北朝鮮の非人道的な、非民主的な、独裁的なことを言っていてもですね、彼等が変わる可能性はないと思います。私は、みなさんが、北朝鮮に直接メッセージを届けるための行動提起があったときには、是非それに参加していただきたい。
今の段階でどういう行動提起をするかというのは、私の口からは今申し上げられませんが、これは近々そういうようなことになるだろうと思います。
私の方からはこれぐらいのことにしておきたいと思います。(拍手)
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