最近見たこと思うこと、ご参考までに
最近見たこと思うこと、ご参考までに
~中国考~ 燕山の声さんの投稿
2007年5月30日
人が相手を「好き」「嫌い」で判断するのは当たり前とも言えますが、駆け引きが絡む場合、こと外交戦略レベルでは感情を殺して相手を知る必要がある、相手に勝ちたいならなおさら。中国に世論は無い、市場開放は進めても思想統制は北朝鮮と変わらない(だから私も投稿の発信場所には注意している)、この国の世論なるものはほとんどヤラセと思ってよい、民主勝手な政治的自己主張、とくに体制批判のそれの結末は、天安門事件のとおり。そういう国を相手に感情を「表に出す」のはいかがなものか。
【民族と国家・公民意識】
中国北京空港の入管に書かれた「中国公民」の文字を見て私は違和感を覚えた、なぜ中国「人」でなく中国「公民」なのかと。学校社会科目の「公民」の言葉以外には、1960年代アメリカ黒人たちの「公民権運動」くらいしか思いつかない。
中国人に確認したら「中国公民」とは「中華人民共和国政府に対し国民としての権利を有し義務を負う、今の中国国籍を持つ者」という意味合いだそうで、この公民(国民)意識とは別に、彼らには世界に分布する「華人社会」への強固な帰属意識がある。天安門事件で弾圧され海外に逃れた学生運動家たちの多くが米国の「公民権」を取得し米国人として暮らしているが、華人意識は捨てていない。私の中国人知人の何人かが日本国籍を取得している。その理由を聞いたら「中国より日本のパスポートのほうが外国のビザをとりやすい、海外出張のときに便利だからね」とさらりと言った。日本公民のメリットが無くなれば、また別の国の公民になるのだろうか、華人意識はそのままに。
拉致した日本人たちを「いまの彼らは(朝鮮民主主義人民)共和国の公民である(から日本には戻さない)」と北朝鮮が言った時も同様な違和感を覚えたが、朝鮮民族は中朝国境を越えて中国東北部*にも分布し、そこでは中国公民でありながら言葉・文化の民族アイデンティティーを保持しているから、中国人と同様な公民・民族意識構造が北朝鮮にもあるのかもしれない。
(注*:「中国東北部」は旧満州国にほぼ一致するが、現中国政府は「満州国」のコトバを禁止しており「偽満州国」か「偽満」の表記しか認めず、満州とはマイノリティーの一つとしての「満州民族」をさす)
【民族を分かつもの】
民族意識に内包される華人の国家意識と逆に、国家と民族が交錯する場合。
「7つの国境、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字、1つの国家」と言われたユーゴスラビアが世界地図から消えて久しい。1989年ベルリンの壁崩壊は社会主義の頸木から民族を解き、バルカンの世界も混沌に包まれ内戦の流血を伴いながらいくつもの国に分裂・独立した。マケドニア、スロベニア、セルビア、モンテネグロ、グロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナが生まれ、もとからあったギリシャ、アルバニア、ブルガリアを加えて複雑にひしめき、現在国連管理下のコソボが独立すれば10カ国になる。独立前から内包していた多様性がバラバラになっただけのようにも見えるが、国境が定まっても民族と宗教が国境をまたいでいるからややこしい。そしてこのあたり中欧・東欧の社会主義国はロシアよりも中国・北朝鮮と深い交流を持っていた国が少なくない。
これらの国々の正確な位置や事情をどれだけの日本人が知っているだろう。そういう私も先月そこを訪れるまでは疎かった。しかし我々が知らなくとも、彼らは日本のことを、我々が彼らを知る以上によく知っている。「世界大戦で破壊されながら努力と技術で世界トップレベルになった、ドイツに似ている国」という日本評をいく度も耳にした。彼らと関わるとき、我々に何が可能なのだろうか。中途半端な理解や同情は禁物、「我々日本人に彼らの心情世界は理解不能」と割り切ってから考えたほうがいい。
バルカンの民族間の言語や血統の違いは、日本国内の地域差とたいして変わらない。彼らを民族に分かつ重要な要素のひとつが、歴史的経緯の違いである。支配者の違い、属する国の違いにより宗教と歴史が異なってしまい、似たような言語・遺伝子を持ちながら同族意識が持てないのである。人は今現在おかれている水平的状態だけでなく、縦方向に延びる時間軸をもっている。過去において同じ時間と精神を共有した記憶は、民族アイデンティティーのタガとなりうる。人は流れゆく時間の中で、他人とともに自分自身も変化しながら今を生きているのである。(写真はコソボ付近)
それを思うと、戦争ですさまじい殺し合いをやり半世紀以上も分離対立の続いた北朝鮮と韓国の融合はもはや実質的に無理なのではないか、違うものが無理をして一緒になる必要も無いだろう、中国の長江の北(呉)と南(越)ではその民族意識が今も大きく違う、言葉も違う、同化する意思もない。北京にいると「越の連中と我々(華人)とは民族が違う」というセリフをしばしば耳にする、お互いに違ったまま共産党支配下での「呉越同舟」に新疆、チベット、満族、朝鮮族などを含めたユーゴスラビア状態が続いているのである。北朝鮮も体制崩壊後は(まずとりあえず)中国の参加に下るほうが現実的だ、今よりマシだろう、血統・言語よりも歴史共有性を考えるなら。
と思っていたら、最近、水面下で韓国と北朝鮮が深く繋がっている場面に何度か出くわして意外な思いをした。その南北連携に(赤軍でも総連でもない)普通の日本人個人商売人が絡んでいたりして、ますますようわからんが、その日本人から「北内部へのアプローチは中国経由よりも韓国経由のほうがたやすい」とも聞いた。前回紹介したあの中国国土地図の写真をもう一度見て欲しい、鶏の肉垂半島に過ぎぬ彼らの共通の敵は有史以来ずっと中国だった、反日だけではなく、反中国の立場でこそ南北朝鮮民族は昔から合体するのである。
中国の「全国人民代表大会(全人大)」、なぁにが人民代表じゃい、選挙の無い独裁共産党員代表者による独裁方針会議を日本のマスコミがわざわざいつも「日本の国会に相当する」とくっつけるのは、2002年9月以前の「朝鮮民主主義人民共和国、え~、北朝鮮では」と同じ構造、言わしめているのは中国政府の圧力である。独裁左翼暴力団の脅しで横並び合体する日本マスコミの腑抜け体質は以前とちっとも変わっていないのである。
【他人と自分の関係】
あえて言う、最近私は中国の共産党独裁体制を、この国にはこの統治方法がとりあえずふさわしいのではと思い始めている、党員のレベルは(国民平均より)はるかに高く国を動かす選ばれしリーダーとしての気概も強い、努力もする(が賄賂も受ける)。路上・食堂あたりかまわずタンを吐き大声で喚きタバコ吸う愚衆を「オリンピックでガイジンいっぱい来るってのに恥ずかしいことするな」と大所高所から指導し北京空港・タクシーをこの4月から全面禁煙にしたのも共産党である。この国に普通の愚民主主義が始まったら、先週の西日本の光化学スモッグも、中国人犯罪もこの程度では収まらなくなる、みなさん、どっちがいい?
ただしこれは華人による華人政治体制の場合。華人による少数民族支配弾圧は別、私は断固反発する、そしてその少数民族には朝鮮族も含まれる。
北アフリカ・マグレブ地域の政府治安当局によるイスラム過激派(ハマス)の取締りに伴う人権弾圧を欧米のアムネスティ・NGOなどは前から強く非難しているが国家外交ベルでの制裁はしない、タテマエは人権擁護を唱えても、本音は、取り締まりが緩んで自国へのテロの波及や難民流入を恐れ、弾圧による治安維持をある程度黙認しているのである、地中海を挟んでその向かいにあるイタリアもフランスもスペインも、そしてアメリカも。
ただし彼らは自国民がさらわれたらその独裁国に戦争を仕掛けて自国民を救う。「風とライオン」の舞台はモロッコだ。
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