脱北者・新聞紙面から
今朝の産経、web掲載がみあたりませんので、テキストで紹介します。
『脱北家族決死の日本海一週間800キロ』
~高波に揺られはき続け~
きょう入管施設へ
1日おきにしか食べられないパン。裏腹に簡単に手に入る覚醒剤。『無力な支配者が社会を後退させている』と粗末な小舟日本海を渡り、青森県深浦町に漂着して警察の保護された北朝鮮人一家4人は6日、法律上の保護期限を迎えることから茨城県内の入管施設に移される。4人は韓国での生活を希望、韓国側も、受け容れる方向だが、移送には時間がかかる見通しで、政府は7日以降も合法的に日本に滞在させる『一時庇護上陸許可』を出す方針だ。一家が日本海を漂流すること一週間、その距離800キロ。4人の供述で、脱北の同期や経緯が次第に明らかになり、北の一般住民の生活の一端が浮かび上がってきた。
警察の調べでは、4人は50代後半の元漁師の男性と妻の60代前半の女性、30代の専門学校生の長男と、20代後半のタコ漁の二男。5月27日夜、北朝鮮北東部の清津から木造船で脱出した。
船の操縦資格を持つ二男が金を貯め船を購入。遼で家計を支えたが生活は苦しく、「1日おきぐらいにパンを食べるのがやっとだった。」
警察に保護された二男は、微量の覚醒剤を所持していた。「長旅なので眠らないようにするためにもっていた。共和国で簡単に入手できる」
「オルム(氷)」。そう呼ばれる覚醒剤が近年、中韓国境地帯を中心に広がっている。韓国の北朝鮮人権団体によれば、「(清津のある)咸鏡北道では、働き盛りの青年層の約5%が覚醒剤を服用」と指摘。北の覚醒剤密輸への国際的な取り締まりが強化され、だいぶついた覚醒剤が国内で安く流通している。
パンを1日おきにしか食べられない生活にもかかわらず、覚醒剤が容易に入手できる異常な環境。「共和国に人権がない」「無力な支配者が社会を後退させていることに疑問と不満があった」。4人は日本の警察官に信条を吐露する。貧困が広がり、特権階級が住む平壌以外の地方都市では、金正日総書記の陰口が目立ち始めたと伝えられるが、その現状を裏付ける「供述」だ。
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木造船は長さ約7.3メートル、幅約1.8メートル。黒色で、エンジンは2機(1機は予備機)。屋根はない。コンパス、パンやソーセージなどの食料、飲料水、衣類がぎっしり詰まったリュックサック、雨がっぱや傘、タオル、大量の軽油、そして食べ物への執着ともとれる箸が積まれるなど用意周到だった。「捕まったときには自害」を覚悟し、毒薬も持った。
一家は当初「韓国を目指すつもりだった」。だが、国境警備が厳しいため、日本と北朝鮮を結ぶ『万景峰号』が出入りしていた新潟を目指す。昨年の日本海に向けたミサイル発射や核開発問題、日本人拉致問題で、北朝鮮船舶の入港を禁じていることは知らなかった様子。北の情報統制は相変わらずだ。
決行の夜、清津は濃い霧。当局の目を盗むにはもってこいだった。が、以降の4日間は悪天候。二男と長男が交代で操縦したが、船は大きく揺れ、「食事はおろか、話もできなかった」。良心は船にしがみつき、吐き続けた。
高波で春水下。何隻かの船とも擦れ違った。追跡の不安を抱えながらの航海。脱出から7日目の今月2日、新潟から約300キロ北の深浦町に漂着した。母は疲れ切った表情でしゃがみ込んだまま動けなかった。そこがどこか分からなかったのだろう、見かけた日本人に「ニイガタ?ニイガタ?」と繰り返した。
住民は「よくこんな小さな船で・・・。海流が急で、深浦には、深浦には流されてきたのではないか」と推測する。
一家は覚醒剤や多少の人民元を所持していたことから、“特別”という見方もあったが、警察幹部は『一般市民』と見ている。県警五所川原署の会議室で寝泊まりしている4人は、提供される幕の内弁当を毎食たいらげているという。
(6月6日付 産経新聞朝刊より)
※関連記事
北人権法で“初難民”
韓国移送まで最大数ヶ月
脱北者一家については、出来る限りの人定調査と、二男の覚醒剤取締法違反容疑での書類送検が終了次第、韓国への移送手続きが始まる見通しで、移送までには、「一週間から最大で数ヶ月かかる可能性がある」(政府関係者)という。
日本に逃れてきた脱北者の処遇については、「政府は脱北者の保護及び支援に関し、施策を講じるように努める」と明記された北朝鮮人権法(平成18年施行)が適用される。今回も船が武装しておらず、工作員の可能性が低いことが分かった段階で、保護対象に切り替えた。青森県警が入管難民法違反の容疑者ではなく、警察官食味執行法に基づく保護対象者としたのもこのためだ。
ただ、警職法の保護に関する規定は5日間が限度。
6日には茨城県内の入管施設に移される。
4人は入管当局に入管難民法に基づく特別上陸許可を申請しており、政府は「一時庇護上陸許可」を出して一定期間の滞在を認める方針。適用されれば4人は最長で6ヶ月間、法務省の保護下で滞在が認められる。
一時庇護上陸許可は、1980年代、自国での迫害の恐れがあるベトナムなどの難民を人道的に救済するために設けられた規定で、脱北者に適用されるのは初めて。日本が北を「迫害国家」とすることになるため、北の反発も予想される。
(6月6日付 産経新聞朝刊より)
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TBSの記事によれば、『この12年間の間に新潟県内に漂着した船のうち、朝鮮半島からの木造船は27隻に上る』(警察調べ)とのこと。
今回の漂着船も、海上警備をすり抜けての漂着です。日本の海上警備が如何にザルであるか、工作活動が、如何に簡単であるかの証明でもあります。
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参考(すでにwebから記事は消えていますのでコピー)
北朝鮮から新潟を目指した脱北者の船は、あの1隻だけだったのでしょうか。この12年間の間に新潟県内に漂着した船のうち、朝鮮半島からの木造船は27隻に上ることが警察の調べでわかりました。
2001年、新潟県佐渡市に流れ着いた木造船。中にあった白骨化した遺体は、北朝鮮の漁民でした。漁に出たまま行方不明になったというのが北朝鮮側の説明です。
朝鮮半島から新潟に漂着した小型の木造船は、ここ12年間に27隻に上ることが警察の調べでわかりました。どの船体にも、ハングル文字が書かれていました。さらに、今年2月には佐渡海峡で船体にハングル文字で「チョンジン」と書かれた船が漂流しているのをフェリーの船員が発見していたことも新たにわかりました。
これまでの所、いずれの船からも人が上陸した可能性は低いと見られていますが、今回の青森のケースを受けて警備態勢が一層強化されそうです。(05日17:58)
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警備強化も大切、脱北者についても、きちんとした聞き取り、人定調査も大切。
今回の教訓を生かして、『スパイ防止法』の制定を急ぐこと、『北朝鮮人権法』の運用方法などに必要な法整備、実務手順のシュミュレーションも必要だと思う。
工作活動に備えることと、人道的対応との硬軟双方の備えが必要だと思う。
※参考記事
下記のサイトが脱北者関連の記事を丁寧にまとめてくださっていますので、参考にしてください。
http://sok-sok.seesaa.net/article/43998733.html
(06/06)青森県深浦港脱北者4名漂着問題に関する報道メモ2
http://sok-sok.seesaa.net/article/44018207.html
(06/05)青森県深浦港脱北者4名漂着問題に関する報道メモ1
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