焦り募らせる家族
フォーカス2007参院選③
拉致問題 2007年7月9日産経朝刊
焦り募らせる家族
6月24日の有楽町での街頭活動の写真と共に、参院選における拉致問題の位置について書かれています。
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忘れて欲しくない。関心を持ち続けてほしい。拉致は解決しておりません。
雨が降りしきる6月末の日曜日、大勢の買い物客らが行き交う東京・有楽町マリオン前。北朝鮮による拉致被害者、増元るみ子さん=拉致当時(24)=の弟で、家族会事務局長の照明さん(51)はこう訴えた。
都心では8年ぶりになる家族会の「原点」ともいえる活動に立ち返ったのは、「焦り」ともいえる思いがあったからだ。
北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議の米主席代表、ヒル小組時間補が6月下旬、北朝鮮を電撃訪問した。中断している協議再開の動きが急になり、米朝が歩み寄りを見せる中、拉致問題が置き去りにされかねないという危機感は募る。
「拉致という非道な問題を解決しない限り、米国がいかなる合意をしようとも(日本の)協力は難しいということを北朝鮮にわからせるようにしてかなければならない」
そのためには、国民の支持と政治の力が必要だ。拉致問題を内閣の「最重要課題」に位置づけた安陪内閣。家族にとって最も心強い内閣だが、目に見える成果はいまだない。
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「安倍さん意外に真剣に拉致問題をやってくれる人はいないよいう思いがある」。有本恵子さん=同(23)=の母、嘉代子さん(81)は、安倍首相への期待を持ち続ける。
昨年9月の安倍政権誕生以来、首相を本部長とする「拉致問題対策本部」を設置し、「家族会の心情を一番理解している」(照明さん)中山恭子氏を拉致問題担当の首相補佐官につけた。
就任直後の北朝鮮による核実験では、即座に日本単独で対北追加制裁に踏み切った。制裁の理由に拉致問題をあえて入れた。政府の姿勢はいっぺんしたものの、北朝鮮は、「解決済み」と繰り返すばかり。
蓮池薫さん(49)の兄で家族会副代表の透さん(52)は「」何も動きがないのが一番辛い。何か動いてくれれば、それを頼りにと言う思いはある。有効な手段を講じて良い方向に持っていって欲しいと話す。「(解決への)動きがない中、選挙期間は更に動きが止まってしまう『選挙でそれどころではない』と言われるかもしれないが、それが残念」とも。
見えない道筋。家族の焦り。それは、安倍政権の焦りでもある。
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家族会は今年3月、結成10年を迎えた。金正日が拉致を認め、被害者5人が帰国してからは5年になる。11月には、横田めぐみさん=同(13)=が拉致されて30年になる節目の年だ。
めぐみさんの母、早紀江さん(71)は「どうしてこんなに動かないのか。(北朝鮮へ)乗り込んで行きたいとも思う。いつまでも解決出来ないというのは、本当に許せない」 と語る。
三年前の前回参院選で、増元照明さんは無所属で東京選挙区から立候補した。被害者家族の声を国会で代弁したいとの思いからだった。38万票あまりの支持を得たが、議席には届かなかった。
「最後のお願い」をしたのも、有楽町マリオン前だった。「拉致問題は家族会だけではなく国の問題。皆さん一人一人が声をあげていくことで政治を変えることができる」。あのとき訴えた思いは変わっていない。
照明さんはホームページにこうも書き込んでいる。「だれがどの党から出馬しようがバッジを着けている方なら、優先的に解決を図るべき問題だ。多くの心を持った方がバッジを着けていただくことにより、解決への道が近づいていくと思う。」家族らは、こうした思いで「心ある一票」 の行方を見守っている。
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